使って気持ちいいスマートフォンサイトになるためのデザイン
スマートフォンサイトにとってのデザインや情報設計は重要である。スマートフォンは日常生活で身近な位置にある情報収集デバイスであり、使っていて気持ち良いかどうかも加味する必要があるからだ。たにぐち氏にデザイン視点で良いスマートフォンサイトを挙げてもらった。
「デザインはすごく重要ですね。もともと、表示できる領域にも制限があるため、機能が少し足りなくても、デザインが良い方が使いたくなりますから。ユーザーはそれが理由でお気に入りやホームに置いておきたくなると思います。例えば、画像検索サイトのNAVERはうまく作ってあります。色がきれいに統一されていて、シンプルで見やすいサイトになっていますね」
見た目が気持ち良いという観点と同じく、デザイン上の工夫で、たにぐち氏が制作時に気をつけているポイントがあるという。
「例えば、リンクの問題です。PCサイトの場合、ポイントを近づけると指アイコンが表示されるので、ある程度、自由な表現をすることができます。一方、スマートフォンでは、マウスオーバーが使えないためクリッカブルな部分を明確する必要があります。それに伴うデザインの制約が発生する場合もあります。さらに、人には癖があるんです。例えば、親指で操作する場合、人差し指で操作する場合などです。タップできる範囲も異なる上、指の影となるデッドスペースなどの配慮も生まれますから、この辺り、スマートフォンをデザインする際に意識する必要がありますね。ちなみに、iPhoneではボタンの大きさは44px以上を推奨というデザインガイドラインもあったりします。一方で、PCサイトで議論されるファーストビューの考え方は特に必要ないと言われています」
ポイント10 スマートフォンサイトにおけるデザインと機能は、6:4くらいの力の入れ具合である
今、注目していることは?
最後に、たにぐち氏にこれからのスマートフォンサイトで期待していることを聞いてみた。
「今一番感じているのはWebアプリの可能性ですね。これまでは、Objective-C(iPhone)や Java(Android)といった、本格的なプログラミング言語を習得しなければ、スマートフォンアプリを制作することはできませんでした。しかし、HTML5の進化とWebブラウザーの高機能化で、アプリに近いことをWebサイトでも実現可能になってきています。TwitterやGmailなどが、Webアプリ化していることに加え、Titanium MobileなどWebの技術でネイティブなアプリを作ることができるプロダクトも登場しています。
HTML5が発達することで、Webの知識でソフトウェア的なものを作れるようになりつつありますよね。例えば閑歳孝子さん(@kansai_takako)が作った「Zaim みんなの家計簿」というアプリがリリースされて話題になっていたのですが、家計簿として使えて、これを「シェア」できるアイデアが入っているのが面白いですよね。こんなソフトを、開発者ではない方が自分のアイデアと知識で作れる世界というのは、今後が非常に楽しみです。今まではWebとソフトウェアは分断された世界でしたが、これからはWebとしてのナレッジを生かしたアプリがたくさん生まれていくと思いますね。そこでスマートフォンの面白さも再発見されていくのではないでしょうか」
現在、3ヶ月先が分からないスマートフォンサイトの世界。たにぐち氏のポイントからも、積極的にいろんなサイトを見て、新しい技術を自分で把握し、サイトの構想に加えてゆくのが大切だ。スマートフォンは、まだまだ未開拓の可能性を秘めている。今回、たにぐち氏に紹介いただいたことは、これからスマートフォン対応したいと考えたときに、チェックシートとして参照してみてほしい。