「常識の枠から飛び出す面白さ」を体感。棚橋弘季さん11月1日ワークショップレポート

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15.Nov.2012

“デザイン思考(Design Thinking)”という言葉は耳にしたことがあっても、何のために必要なのか、どんなときに役立つのかを明確に理解し、実際に使いこなせている人は、まだそれほど多くないのではないのでしょうか。

そこでOpenCUでは、Think Socialグループにて、企業の新商品・新サービスの開発支援や、イノベーションを起こす人材育成のお仕事をされているデザイン思考家の棚橋弘季さんをお招きし、共同デザインを体感するイベント「コ・クリエーションする未来 〜棚橋弘季「共同デザインの面白さ」を体感するワークショップ〜」を開催。「問題を新しい見方で定義し直すとどうなるか?」「とにかく作ってみながらこれまでにない解決方法を考えてみる」といったデザイン思考を用いながら、まだ見ぬ未来を創造するとはどういうことなのか?棚橋弘季さんによる、楽しいワークショップの模様をお届けしたいと思います。

Text:野本纏花

 

デザイン思考=まだ見ぬ未来について考える方法

イベントの冒頭は、棚橋さんからの自己紹介とデザイン思考についての簡単な知識の共有から。

棚橋弘季

「ぼくが考えるデザイン思考とは、まだ目に見えず触れることもできない未来について考える方法であり、今までになかったものを作り出すイノベーションの方法なのです」。そんな誰も知らない未来について考えるためのデザイン思考には、具体的に次の2つの手法があると、棚橋さんは言います。

◯ プロトタイピング作りながら考える
とりあえず見えるようにする、とりあえず触れられるようにする方法

◯エスノグラフィ体験して共感する
今、見えているものや触れられているものの“当たり前”を疑い、未来を切り開くきっかけを探り出す方法

デザイン思考が必要になってきた理由とは?

そもそも、どうしてデザイン思考が求められるようになってきたのでしょうか?

「みなさんも体感している通り、今、社会が大きく変わっています。今まで起きたことないようなこと(高齢化・グローバル化・エネルギー問題・新興国の発展など)が、どんどん起きている。そうして環境が変わったことで、産業革命以降できていた従来の仕組みが機能不全になっているのです」と棚橋さんは語り、イノベーションで新しい仕組みを作っていく必要があると話しました。

さらに、フューチャーセンター・ネットワークによる、社会イノベーションの推進の第一人者である野村恭彦さんの言葉を例に挙げ、「新しい環境を作るときに、今までの発想では、“どこからかヒーローが現れるのを待って、その人が何かを変えてくれるはずだ”と待っていたのが、これからは“私たち一人ひとりの行動の結果として、社会イノベーションを起こさないと世界は変わらない”という発想へと変化しているのです」と解説していました。

 

みんなで作りながら考えるという新しい発想

次に紹介されたのは、アメリカの「KaBOOM!」。この団体は、公園が必要な人たちに環境を用意してあげて、自分たち自身で公園を作ってもらうという団体だそうです。「今までは“与えられたユーザー体験を良くしよう”という発想でしたが、今は“一緒に作る体験をどうデザインするか”が重視される。体験という言葉が持つ意味も、これまでは“消費”や“利用経験”だったのが、“想像”や“参加”へと変わってきています」。

kaboomのサイト画面

棚橋さんは、新しい何かを生み出すという普段の仕事の中でも、ユーザーになる人を巻き込んで、一緒に考えながら作っていくということを実践されているそう。そのときに必要なのは言葉ではないと言います。「言葉だけでやろうとしても、うまく伝わりません。頭の中で考えるだけでなく、作ったものに触れながら、みんなで一緒に考えることが大切。雑でもいいから、一度カタチにすることで、会話が生まれます。今まで創造もしなかった未来を創造してみましょう」と語り、ワークショップへと移りました。

“最高のアイデア”を生み出すワークショップ

 

「相互インタビュー」

近くにいる人と2人組になって、互いのバッグについてインタビューします。どこが気に入っていて、どこが使いにくいのか。インタビューを通じて、相手のバッグの課題を見つけていきます。

 

「アイデアスケッチ」

インタビューで見つけた課題を解決するために、アイデアをA4の紙にスケッチをします。考えるアイデアは2つ。“最高なアイデア”と“最悪なアイデア”の2つです。

アイデアスケッチ

「アイデア共有」

描いたアイデアを互いに説明し合ったあとは、1人ずつ順番にアイデアを声に出しながら壁に貼っていきます。

アイデア共有

「プロトタイピング」

ここからはグループワークです。グループ毎にみんなで話し合いながら、アイデアをカタチにしていきます。用意された模造紙やテープなどを使って、実物大のバッグを作ります。

プロトタイピング

プロトタイピング

発表の時間について

最後は、自分たちがどんなバッグを完成させたのか、各グループの代表者による発表が行われました。次々に思わぬ発想が出てきて、会場は大盛り上がり!これまでになかった新しいバッグがたくさん生まれた瞬間でした。

チーム発表

チーム発表

まとめ

今回のワークショップでは、“アイデアは自分の頭の中で考えるだけでなく、作ったものに触れながら、みんなで一緒に考えていこう”という、デザイン思考の中のプロトタイピングの手法を体感しました。まだ見ぬ未来、触れたことのない未来を創り出す楽しさを共有できたことで、初めましてだった参加者のみなさんも、イベント終了後にはすっかり打ち解け、あちこちで話に花が咲いていました。

 

 

◯イベント概要

コ・クリエーションする未来 〜棚橋弘季「共同デザインの面白さ」を体感するワークショップ〜
opencu.com/events/co-creation

開催日 :2012年11月1日(木) 19:00 – 21:00 (18:30開場)
場所  :loftwork Lab 10F(渋谷区・道玄坂)map
出演  :棚橋弘季(デザイン思考家/株式会社コプロシステム所属)
定員  :40名 ※応募多数の場合、抽選となります。
主催  :OpenCU

 

棚橋弘季

デザイン思考家/株式会社コプロシステム所属

デザイン思考やゲームストーミングなどの手法を用いた商品・サービスの開発を中心に、企業がイノベーションを生み出すための支援業務を担当。また、イノベーション人材の育成を目的としたワークショップやセミナーの企画・実施も行っている。
ブログ「Think Social Blog」「DESIGN IT! w/LOVE

著書
『ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術』

『ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト』

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