ハイパーローカルメディアのここでしか聞けないトーク〜ゼロからの地元メディアづくりに挑戦!〜 イベントレポート

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09.Dec.2013

さる2013年11月29日、紅葉真っ盛りの京都はロフトワーク烏丸にて、ローカルメディアを考えるトークイベント「ゼロからの地元メディア作りに挑戦!」を行いました。枚方(大阪)・滋賀・恵那(岐阜)から個性的な地元メディアを招いて、京都でのOpenCUでは最大の約40名が集う熱いセッションとなりました。

 

いま地元メディアに注目!


最初にロフトワークディレクターの森内から「いま、地元メディア(ローカルメディア)に注目する理由を紹介しました。

1.個人メディアの影響力が増している
2.ひとり1台スマートフォン時代になってきた
3.行動する人のローカル志向
4.地元にはパワーがありあまっている!

島根県美郷町から地域おこし協力隊の方を招いて行った10月のOpenCUワークショップでは、アクティブでアグレッシブな地元の人の様子を見聞きすることができました。そこには高齢化や過疎と言ったニュースで聞く暗いイメージとは全く異なる元気あふれる地域の姿がそこにはありました。

◆足もとの宝をデザインする 〜NOSIGNER太刀川英輔、島根県美郷町〜 ワークショップレポート
https://www.opencu.com/2013/10/nosigner-misatocity-report/

 

ゼロからの地元メディアの影響力に参加者も感嘆

さて、お膳立てができたところで本日のメインコンテンツである各メディアからのプレゼンテーションです。

“おもしろければ勝手に広がるはず”(枚方つーしん)

枚方つーしんは大阪府枚方エリアの情報のみを発信する”地元民にしかわからない「雑談ネタ」を発信するインターネットサイト”。ブログメディアの形式で低コスト運営の方法を取りながら3年間の運営で人口40万人の街で月間100万PVを超える「地元の人気メディア」に育てあげたことで注目を集めています。

◆枚方つーしん – 枚方市の雑談ネタをもりもりと!
http://www.hira2.jp/

◆元お笑い芸人が発信する地元情報サイト「ひらつー」が面白い
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1371777380526.html

元お笑い芸人の編集長本田さんからは、ひらつー独自の記事の選定基準のお話、地元にぽっかり空いていたビジネスモデルのお話、検索流入と”リアル”クチコミの伝播力のお話、チームでの編集と広告の役割分担によるクオリティの担保のお話、などなどを伺うことができました。また、この日は当日になって大阪のローカルメディアを取材している大手新聞社から見学の方がいらっしゃるなど、地元メディアの注目度が上がってきていることを実感しました。

 

 

“地元の人目線だけでははなく外からの目線を入れる”(滋賀のええトコ)

滋賀のええトコは独立してWeb制作プロダクションを始めた林さんが2012年に立ち上げたFacebookページを中心とする地元メディア。30代女性をターゲットに滋賀の魅力を伝える写真+キャッチコピーで滋賀メディアNo.1の14000人のいいね!を獲得。(Facebookナビ都道府県ランキング調べ) このFacebookページをきっかけに8月には「大津パルコ 滋賀展Vol.1」のプロデュースを実現するなど、オンラインからオフラインへ、地元メディアだからこそできる活動の幅を広げようとしているローカルメディアです。

◆しがトコ:滋賀のええトコ
https://www.facebook.com/shigatoco

◆「飛び出し坊やも夏休み !?」ー「大津パルコ 滋賀展Vol.1」へ30体以上が飛び出す
http://biwako-otsu.keizai.biz/headline/897/

Facebookページをベースに1年で大成長を遂げたメディアであるしがトコ。メディア運営経験者も多い今日の参加者たちは、各投稿が平均2500いいね!を獲得するという伝播力・感動力の高さにびっくり。その秘訣について鋭い質問がされていました。また滋賀の良さを伝えたい!という熱い気持ちと確固とした編集方針を持って狙ってコンテンツを投下しているロジカルさの両方が印象的でした。

 

 

 

“プログラムの実績が「地域のカタログ」に。ふれあいを通してファンを増やしたい”(恵那山麓博覧会)

恵那山麓博覧会[えなか]はNPOえなここが運営する岐阜県恵那市・中津川市のメディア。ワークショップを通して地元の文化や人と触れ合う体験プログラムがコンテンツです。今年は10-11月の2ヶ月間で合計60ものプログラムを実施しました。 「市町村合併をきっかけに映画化!?」「地域活性化の仕組み「オンパク手法」って?」「「虫ガール」とダイエット食?」「テレビ取材がやってきた!」「おばあちゃんのレシピから製品開発に挑戦!」などなど気になるキーワードが盛りだくさん!

◆恵那山麓博覧会[えなか] 公式Web
http://www.enaka-gifu.com/

◆魅力発信へ60の体験プログラム 来月から恵那山麓博覧会 - 岐阜新聞 Web
http://www.gifu-np.co.jp/hot/20130918/201309181123_7711.shtml

最後は恵那山麓博覧会の運営の中心メンバーである園原さんに地元の人と一緒にゼロからプログラムを組み立てる運営の仕組みやビジネスモデル、プロジェクトの収支と言った裏側まで、赤裸々にお話をしていただきました。地元の人とつくる10名規模のイベントを短期間に集中して行う「おんぱく手法」という町おこしのモデルにはみなさん興味津々でした。

 

 

 

参加者の大半が “情報発信者視点”!

イベントの後半は登壇者の3人に参加者の皆さんも交えた質問&ディスカッションタイム。モデレーターとして地域活性xITをテーマにしたオンラインメディア「finder」を運営する”オカッパの人”こと本田正浩さんにも加わっていただきました。

◆finder | 離れた地域に住む人のエネルギーを交換する「プロジェクト&メディア」サイト
http://fin.der.jp/

実はこの日集まった参加者の皆さんのほとんどが「現在メディアを運営している」か「これから地元メディアをやってみたい」と考えている情報発信者。

 

「地元でメディアの中の人として顔出しをすることについて」
→地域サイトでは”誰がやっているか”が大事だと思っている(ひらつー)
→名前と顔出しは信用につながるので最初から行っている(しがトコ)
→街でおじさんから「頑張れよ」と言われるのでうれしい(えなか)

「シェアされやすい記事・写真についてのこだわりについて」
→他府県から見た滋賀県の魅力を再発見してあげる。技巧的なことよりも良い記事を作ることが大前提(しがトコ)

「みなさんの収入について」
→私たちは株式会社にしているのでそんなに貰っていませんよ(笑)。原価はライブドアブログを使っているのでほとんどかかっていません(ひらつー)

「リアルイベントの可能性について」
→地元メディアは地域が限定されているので呼びかけて集めることは比較的簡単なんが強い。(ひらつー)
→1年目と2年目でPRの方法は変えていないのに県外からのお客さまも増えてきた。マニアックなプログラムではソーシャルメディアで噂が広がって東京や群馬など遠方からのお客さまが増えた(えなか)

「地元のイベントパートナーの巻き込み方は?」
→このプログラムを通して何を伝えたいのかを一緒に考える。どんなお客さんにきてもらって、どんな体験が提供できるのか、キャッチコピー、タイムテーブル、価格設定などを考えるツール(ねりねりシート)を作って主体的に考えてもらうが、彼らの気づかない魅力があれば私たちがコーディネートして引き出しています。1年目は7月にパートナー説明会をして10・11月に実施、それが大変だったので2年目は5月に説明会をした(えなか)

などなど、参加者の皆さんからの鋭い質問に、登壇者の皆さんも現在進行形の悩みを打ち明けながら回答する濃密なトークディスカッションとなりました。

 

地元との”近さ”をポジティブに捉えてアクティブに”やってみる”こと

トークイベントも佳境を迎え、ここで各メディアにこれからの展望を聞きました。

「もっとニッチだけど生活に大事な地元情報を扱いたい。また機会があればリアルな固定した場所を持ってお店を誘致したりイベントをしたい。中途半端は良くない。なんで枚方?とびっくりされるような一流のイベント、”ひらかたフェス”も僕らのひとつの夢。個人的には地元をテーマにした映画も作ってみたい。」(ひらつー)

「どうやってマネタイズができるかが一番現実的な課題。今後も長く続けていけるような仕組みをつくりたい。しがトコらしいお金の作り方を考えます。」(しがトコ)

「期間限定で2年やってきたが通年でのプログラム運営に挑戦したい。またえなかの”家”を構えてそこで体験もできるようにしたい。ただ当面は運営する人をどう確保するかが大きな悩みです。」(えなか)

 

最後に各メディアの3人から地元メディアを運営している・されようとしている方へのひとことをいただきました。

「Twitterで”地元に関わりたい!”とつぶやいたらスカウトされたという偶然から参加した私でも、やってみたらこうしてなんとか2年間続けることができています。最初の一歩を恐れずにやってみましょう」(えなか・園原さん)

「地方ほど、自分たちの住んでいる街の情報がすごく少ない。だから地元の魅力に気付きにくい。その問題を解決すれば、地方はもっと元気になると思うし、そういう意味でもローカルメディアって大事だと思ってます。ぜひ、そんなメディアがもっとたくさん生まれてほしいです。」(しがトコ・林さん)

「メディアと言うと何かたいそうに聞こえるけど、お金がかからないのでやってみたらいい。やって続けてアクセスを少しずつ上げていければなんとかなる。地元だからダイレクトに返ってくる反応を確かめながら進めてみれば良いのでは。僕もそうでしたから。」(枚方つーしん・本田さん)

 

今回のテーマ「ゼロからの地元メディアづくり」において登壇したの3人と参加した方々間に大きな隔たりはありません。トークセッション中はかなり真面目に聞いていてやや緊張雰囲気だった参加者の方々も、交流タイムでは積極的に登壇メディアの方に話しかけて、質問やアドバイスを双方向に行っていたことが印象的でした。

 

また、当日は大学生の石橋さんにグラフィックファシリテーターとして参加協力をしていただきました。情報量が非常に多いセッションの中で、手際よくわかりやすくそしてポップに即興でまとめる姿は、真剣な熱気に包まれた会場の中で良いデモンストレーションになりました。石橋さんありがとうございました!
(ロフトワーク烏丸ではOpenCUイベントのお手伝いに楽しんで協力してくれるボランティアスタッフも募集しています!)

 

レポートアーカイブ

◆『ゼロからの地元メディアづくりに挑戦!運営者と学ぶ今とこれからの価値を産み出すノウハウ』(多分)最速レポート | インフォバーンKYOTOブログ‐見習い小僧がお届けします。‐
http://minarai.boy.jp/event_report/2996/

◆地元メディアが悠々と飛び越えるオンラインとオフラインの垣根 | finder
http://fin.der.jp/2013/12/opencu-kyoto/

◆ロフトワーク烏丸瓦版 | それぞれ違う地元を発信するかたち
http://loftwork.tumblr.com/post/69772904870

◆Twitter(スクロールしてご覧ください)

 

編集後記

近年は地方貢献やソーシャルグッドに関心を持つ人が増えて、地方×クリエイティブを考えるワークショップや、ローカルメディアに関するイベント自体は珍しくなくなりましたが、ローカルメディア全般を上から俯瞰して総論的に論じるプログラムではなく、実際に草の根でゼロから運営している無名の当事者たちの話を聞いて参加者とみんなで考えるイベントを、人の集まる東京ではなく京都で行うことについて、企画当初は非常にチャレンジなイベントだと考えていました。

しかし蓋を開けてみれば会場は満員でしかもメディアを運営されている当事者の方が多く集まる非常に濃い空間を作ることができました。(遠くは東京や岡山県からの参加者も!)

最後にモデレーターのfinder本田さんからいただいた振り返りのひとことをご紹介します。

「インターネット業界ではここ数年になって「O2O(オンラインtoオフライン)」、リアルの場をどうやってWebとくっつけるかを考えるようになってきたのですが、地元メディアを運営する皆さんは最初からそれは一体のものとして考えていらっしゃいます。そしてそれは当たり前のことだということに気付かされました。

メディア、オンライン(オフラインも)、地域と、まさにど真ん中の企画で、京都へ来たかいがありました。今日は同じような課題を抱える参加者が集いました。数カ月後、1年後に、当日の参加者の活躍が見えてくるのが楽しみですね。」

登壇いただいたみなさん、参加者のみなさん、またそれぞれのメディアでお会いしましょう!

■モリウチアキラ(ロフトワーク烏丸 ディレクター/エヴァンジェリスト)

 

 

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