去る、2月8,10,17,19,25日の5日間、OpenCUの企画した、MAKE YOUR LEMONADEワークショップ(クリエイティブ・プロデューサー養成講座)を実施しました。本ワークショップでは、クリエイティブの提案のためのプロデュース力を付けることを目的に、それらのスキルを「ロジカルシンキング」「ビジネスモデル構築」「プレゼンテーション」の3つに分解。3名の講師の皆さんに登壇いただき、全5日間のワークショップにしました。ここでは、5日間の振り返りと実施から見えてきたポイントの整理を行ってレポートとしてみます。
テキスト/長者原康達(OpenCU)
https://www.opencu.com/2016/01/make-your-lemonade/
はじめに…本ワークショップを設計した意図
ここ数年OpenCUを通して主にデザイン思考のアプローチを、あらゆるカタチでワークショップにしてきました。一見、違うものとみなされる、例えば、データのビジュアライズの話もすべてクリエイティブのスキルの一環としてみなし、ワークショップ化してます。その結果、「クリエイティブを提案するプロデューサー」についてスキルを整理したところ、それらを通して、スキルセットにしてワークショップを設計と面白いのではないかと考えました。
そこで、本講座で目指したかったゴールは以下の2点です。
1)着想~構築~プレゼンを「自覚的に」設計できる力を養う
2)それを俯瞰して、探求したい領域を再発見する
1)を考えるに当たって、クリエイティブプロデュースのどの工程をどの比重で行うか、悩ましいところでした。例えて言うとすべての回を現状の2倍、計10日間で行うことも可能でしたが、OpenCUメンバーの皆さんの多くが、社会人であり、放課後のカリキュラムに参加している現状から、なるべくコンパクトに設計するのがよいと考えました。
また、1)と2)は密接に絡んでいるため、着想の提供から、自己探求の流れを本ワークショップで生み出せていければゴールと考え、なるべくスタンダードな道筋を取りたいと考えています。
では、個別にワークショップの内容をおさらいしてみましょう。
論理思考のゴールは創造的な発想に転換できること
DAY01/02 論理思考 by 高橋俊之
講師の高橋俊之さんは、現在、立教大学経営学部の特任准教授でありますが、グロービスのマネジメントスクール代表、自身が主宰するSCHOOL OF 未来図というビジネススクール等、ラーニングについて長年プログラムを実施している方です。対象はビジネス全体に幅広く、そのノウハウはシンプルかつ実践的であることに主眼を置いてます。
本ワークショップにおける論理思考も、「実践できるほどシンプルな概念の使い方」です。高橋さん曰く「論理思考の難しい論理を覚えることもなく意識を変えて使っていく」ことが重要だとのです。
初日の冒頭では、「論理思考ができると何がうれしいか」の整理がありました。
◎スピードがあがる(思考、理解)
◎良い答えがでる(幅、深さ)
◎パワフルになる(納得性、独創性)
当初から論理思考は、アイデアを出すための”準備運動”のようにイメージしていたのですが、まさにその通り。ワークショップ全回でやりたいことが、上流の論理思考に密接に紐付いていました。これを念頭にワークは課題と思考の連続で進んでいきました。
<出てきたキーフレーズ>
・はじめに目的を押さえる
・「要するに、例えば」の型
・メカニズム=仕組みを押さえる「システム思考」
・良いメカニズは「良い要は」から生まれる
・説得力を増すために相手の「ツボ」(=メカニズム)を押さえる
ワークの中では、以下のような身近に感じられる課題がトピックになっています。
<ワークでの課題例>
・人が何かをやり続けるための仕組みを考えてみましょう。
・「あるビルのエレベーターが遅いと苦情があります」その苦情を減らすためにオーナーが実施できる施策を考えてみてください。
・繁盛して行列ができる「500円寿司ランチ」があります。お客さんを待たせないためにはどうすればよいでしょう?
2日間を通して得られた、「視点の移動」と「発想の転換」は、まさに<デザイン思考>でも話題となる、リフレーミングの手法。ロジカルにものごとを整理することは、創造的にもなるというよいエクセサイズになったと思います。
ビジネスモデルは「守・破・離」を設計すること
DAY03/04 ビジネスモデル構築 by 小山龍介
続いて、ビジネスモデルジェネレーションの翻訳者であり、多数の著書や翻訳書も手掛ける、ブルームコンセプトの小山龍介さんによるビジネスモデル設計のワークショップです。小山さんは前回の高橋さんを引き継ぎ、現状を把握する「システム思考」を行い(守)、そこに新しい軸を足して(=破)、デザインし直す(=離)というカリキュラムを提供していました。
そこに、現状を打破する、いわゆる「イノベーティブな行為」がどうやって形成されていくのか、そのプロセスの理解(≒正解はないが)を体感することが重要というメッセージがあります。
ただ、冒頭で定義したビジネスモデルは、「どのように価値を創造して顧客に届けるかを論理的かつ構造的に記述したもの」とあるように、前提として論理的であることは忘れてはいけません。前回のシステム思考の考え方がここで効いてきました。
また、「現象は構造から生まれる」という概念も抑えるべきポイントであり、これらのメカニズムをドキュメントに落とすことが、ビジネスモデル設計の基本となります。
<出てきたキーフレーズ>
・ビジネスモデルのイノベーションを起こす「守破離」
・現象は構造から生まれる
・ビジネスのメカニズムが分かれば「要は、例えば」で語れる
・ビジネスモデルキャンバスは「×ジグソーパズル」「◯ルービックキューブ」
=細かく分解できず、全体の調和が大切
・「破」をもたらす<イノベーションアサイメント>を考える
・時間とともに強化される「優位性」=自己強化ルーブの発見
・3つのビジネスモデルタイプ
- アーキタイプ:成功する事業が持つ原型
- プロトタイプ:成功しうる事業の試作
- ステレオタイプ:成功している事業の類型
・イノベーションの3つの視点「鳥の目」「虫の目」「魚の目」
1つの大きな発見は、「ビジネスモデルキャンバスをチェックリストに使わない」ことでした。シートを目の前に項目を埋めることが目的でなく、そこから見える自己強化ループの発見こそが重要というわけです。これは目からウロコでした(結構、書くのにドツボって次のステップに向かえない人が多いのではないでしょうか?)。
いずれにしろ、既存のビジネス(競合など)、自分のビジネス、さらにこれから設計するビジネスをビジネスモデル・キャンバスに書起こし俯瞰して、自己強化ループを見つけることが先決。それを実現する具体を議論を詳細に行っていくプロセスがよさそうです。(本講義でも紹介された、amazon創業者Jeff Bezos氏の有名なナプキン図)http://www.voice-research.com/docs/blog?page=1
共感と熱意が伝わらないプレゼンは、
「関係各位(Cc)」でラブレターを出すようなもの
DAY05 プレゼンテーション by 池松緑
最終日は、ビジネスモデルの提案を目的としたプレゼンの講義。講師の池松緑さんは、海外での留学経験や自身も代理店に属し、プレゼンのメンターも行っている方です。講義はインプットをそこそこに、声を出してプレゼン練習を行うことに主眼を置いて設計されていました。
開口一番、「プレゼンは場をどう設計するか?です」そして、「その印象は最初の90秒で決まります」というフレーズからはじまりました。話の内容を聞いてもらうために自身に興味をもってもらえること、そして、それを演出できるかがキモとなるということです。
次に「書類を渡す」ことと比較して考えることで、プレゼンの意味を考えてみます。つまり、「プレゼンは共感であり、熱量」である、というシンプルな認識です。素振りや目線の配り方にも意味があり、上手なプレゼンターほど会場を(ブロック分けした上で)目線で確認をとっていくそうです。一見、当たり前に思えるこの事実を実施するのが難しいわけですが、まずは意識した上で自分で答えに到達する行為が重要と言えます。
<出てきたキーフレーズ>
・プレゼンは自分自身(プレゼンテーター自身)である
・はじめの90秒でプレゼンテーターに対する評価は決まってしまう。
・相手に共感と熱意が伝わらないのは関係者各位でラブレターを出すようなもの
・熱意=パッションステートメントの無いプレゼンは「今、聞かなければならない」説得力無し
→ つまり「つかみ」の無いプレゼンになってしまう。
・プレゼンは、1テーマ(ストーリー)だ。
・プレゼンの目的は、「相手に次のアクションを取ってもらうこと」
・そのプレゼンにTAKE AWAY(持って帰ってもらえるもの)は(1つだけでいい)あるか?
・ベストの予行演習は録画してみること(観客の前で)
会場では、ペアやチームとなって「共感を生むエピソードを見つける方法」「パッションステートメントを設定する練習」を行いました。最初は恐る恐る会話していた参加者も最後には、エピソードをその人のキャラクターのように活用して共通言語を作るなど、場の作り方を学ぶことができました。
最後に、DAY03までに準備したビジネスモデルをチームに分かれ、プレゼンしたのですが(宿題でキーフレーズや事例などを事前準備しつつ)なんと、準備がほどんどないチームの方がパッションステートメントを強烈に印象付け、結果的に心に残るプレゼンとなった(投票により)、ハプニングも起こりました。
ワークショップの経験をどう活用すべきか?
述べ10時間のワークの結果、さまざまな視点を見つけることができました。ただ、それを自分の身体に吸収して実践に結びつけるのは、やはり、実践練習になります。クリエイティブ・プロデューサーの所作を、3つの側面に分解して、それぞれのポイントを理解することで、総合として、創造性のあるプロデュースを実行する練習は行いました。それを実践するためのアレンジや会社におけるチームビルディングは各自の工夫にてカスタマイズされることになるでしょう。
しかし、ビジネスモデルを作り、現状を変えていくためのコンパスがあるだけで、仕事がワクワクする実感が芽生えました。参加者の皆さんが、学んだことを社内に伝えリードしていけると素敵だと思いました。
以上、駆け足ながら非常に濃い5日間を伝えてみました。