これであなたも“キロクニスト” 「残す」ことから価値を生む! キロクニスト養成講座#1開催レポート

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08.May.2015

去る2015年4月3日、「キロクニスト養成講座」第1回が開催されました。キロク学会とは、Web時代の「記録とコミュニケーション」を考えながら実験する学びのコミュニティです。昨年、OpenCUにて開催したイベント『キロク学会 #01 〜記録×アーカイブ×コミュニケーションの可能性を共有するコミュニティ』(http://opencu.com/events/kiroku-gakkai-01)を体系立てた全3回のワークショップとして企画されています。

キロク学会「キロクニスト養成講座」
http://www.opencu.com/2015/03/kirokugakkai-workshop/

第1回目の講師は、デジタルアーカイブ・コーティネーターの熊谷薫さん。昨年まで東京文化発信プロジェクト室に在籍し、東京アートポイント計画プログラムオフィサーとしてアートプロジェクトのアーカイブを専門に活動されていました。今回は、“キロクニスト”への第一歩を踏み出すための鍵となる「視点発見力」をテーマにレクチャーを展開。講座は熊谷さんによる講義とワークショップの2部構成でした。本ページで、OpenCUを運営するロフトワークPRの原口さとみが体験レポートをお伝えします!

アーカイブ、とは。

まず前半は、講師の熊谷さんよりアーカイブについての講義です。そもそもの言葉の定義ですが、「アーカイブ」とは、

「重要記録を保存・活用し、未来に伝達すること。アーカイヴ (archive) とは、ある特定の場所、人物、施設、グループの記録総体をさす。あるいはその記録を保存しておく場」

のこと。ミュージアムや図書館がその機能を担っており、講義の前編ではその背景や世界と日本での違いなどを歴史を紐解きながら学びました。

例えば、国立近代美術館では、かの有名な作品『麗子像』で広く知られる岸田劉生の絵画が多く所蔵されています。その理由は、「本人が寄贈したから」。その時代で価値があると判断されたものしか施設ではアーカイブされません。だからこそ画家本人が戦略として、価値があるものとして残るようにした結果、いまの所蔵の多さ=著名さにむ結び着いたようです。

証拠のため、記録のため、アイデンティティを示すため、コミュニティ形成のため…というアーカイブの目的の変遷に、「歴史は勝者によって書かれる」という陳舜臣さんの言葉を思い出しました。

現在のアーカイブ事情

ネットを活用するヒトにとって、身近で、最大のデジタルデータベースとなり得るのがGoogle。これに拮抗するかたちで、いま欧米諸国をはじめ各国のミュージアムやアートプロジェクトでは、デジタルアーカイブをどう有機的に活用するかの議論が活発化しだしているとのこと。これまでのように、各機関が所蔵品を「そこでしかみられない」という観点で囲い込むのではなくなっているようです。

その代表例が、ミュージアムのデジタルデータを公開するWebサービス、「europeana」。私も実際使ってみましたが、確かに絵画やデッサン、古文書、アーティストにまつわる資料等々アートカルチャーのデータがどんどん出てきます。
他にも、MOMA(NY)、New Museum(NY)、慶應義塾大学アートセンターKUAC(JP)等をご紹介。

europeana

 

こうしたデータを集め、整え、公開すると、次に考えるべきは「どう使うか」。これまでひとつひとつ、単体のアーカイブに価値が見い出されていましたが、それが集合体となったときに生まれる新たな価値に注目が寄せられています。

熊谷さんが企画・監修として東京文化発信プロジェクト室で携わったP+ARCHIVEプロジェクトは、まさにその新たな価値を探るためのプロジェクト。記録のPDCAを回し継続するためのツール、「アート・アーカイブ・キット」が生まれました。

こうして、「記録→アーカイブ→評価」のルーティンをまわすことで、例えばプロジェクトそのもののデータが「資源」でなく「資産」になると熊谷さんは言います。

そこで紹介された事例をここで共有します。

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014(デジタル・アーカイヴ

 

仙台メディアテーク(「東日本大震災の記録・市民協働アーカイブ|3がつ11にちをわすれないためにセンター」)

 

小布施町立図書館まちとしょテラソ of 「交流と創造を楽しむ、文化の拠点」

 

記録から生まれる新しい価値を見て、アーカイブの面白さを知ったところで会場から1つ質問が。「アーカイブを始めるなら、勉強するとしたらどうすれば?」

答えのポイントはひとつ、「とにかくまずはやってみること」。

と言いつつも、学習院大学では「アーカイブズ学」の専攻があること、「アートドキュメンテーション学会」を覘いてみること、「図書館学」を学んでみることなど、ヒントをいただきました。

個人的に、「アーカイブ=既に終わったもの、終わったけどちょっと捨てられないもの…」のような、影の薄いものの集積地のようなイメージがありました。が、それは単にアーカイブしたものを活かせていないだけ。集めた情報にどう息を吹き込むのかが腕の見せどころだな、と私も自分の過去の記録たちに頭を巡らせました。

ワークショップ:「キロクニストの視点を持とう」

事例を中心にインプットした前半につづき、後半のワークショップセッションでは「なぜアーカイブするのか?」を自問自答し、自らの目的を自覚する作業を主に行っていきました。

ワークシートを活用して、これから記録したいもの(これまで記録してきたもの)を題材に、5W1Hをベースにしながら情報を整理します。

実際に目的や思考を整理することで、「記録をシェアすることで相手と仲良くなる」「チームの団結が高まる」、「グラフィックで記録すれば記憶の要素が高まる」「思い出す力が強くなる」、などなどワークからいろいろな“記録の効用”が、参加者の声に表れていました。

番外編:「お悩み相談ワークショップ」

今回のワークで見えてきた記録作業のキモは、「ためるタイミング・使うタイミング」。闇雲に溜めるでもなく、放置するでもなく、記録の方法を自分でファシリテーションしよう!…という話に至ったところで、質疑応答ならぬ「お悩み相談ワークショップ」が開催されました。

発酵デザイナー・アートディレクターの小倉ヒラクさん、東京アーツカウンシルの中田さんといったキロク学会の他のメンバーも加わり、会場からのお悩みに答えます。

例えば、

「都内のセミナー、イベント、勉強会で記録した、年間300本近い膨大な音声・ビデオデータが手元にあります。膨大すぎてどう活用するかわかりません…」
というお悩み。

ヒラクさんからは、「プロジェクト化して、アシスタントに任せたら」「オープンなアーカイブにしてみては」などのアドバイスが。それに加え、他の参加者からも「indexを立てて、そこにレビューを加えて新たな価値をつけて保存するのはどう?」など、会場全体で盛り上がりました。

「人によって情報をオープンにする度合いが異なり、公開するのが難しい」「変に人を誘導させない情報の見せ方って?」等々、各々のお悩みが飛び交い、私も今まで気にしていなかったポイントが指摘されて非常に面白かったです。

最後は懇親会でお互いの活動状況や情報交換などを行い、第1回はお開きに。次回以降も、記録を編集する力、記録を伝えていく力などについて考察するワークが続きます。

 

テキスト/原口さとみ(ロフトワーク)
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