こんにちは。ロフトワークのクリエイティブ・ディレクターの重松佑です。
UCD(ユーザー中心設計)という言葉をご存知ですか? 簡単に言えばユーザー中心にモノづくりをしていこうという設計方法です。当たり前のように聞こえるかもしれませんがUXリサーチの専門家であり利用品質ラボ代表の樽本徹也さんは「ユーザーの声聞くべからず」と言います。はたしてその真意のほどは?
2012年10月29日(月)に、OpenCUのWorkshop「ユーザーに弟子入り〜エンジニア/デザイナのためのユーザーインタビュー入門講座」が開催されました。ワークショップ当日の様子をレポートします!
ユーザーのxを聞く
「ユーザーの声聞くべからず」という刺激的な切り口で始まったワークショップ。「ユーザーの声を聞くのは当たり前じゃないのだろうか」と頭の中がいきなり「?」マークで一杯です。まずは樽本さんによるUCD(ユーザー中心設計)とは?という講義からスタート。ユーザーの声の正体を分解すると「V=F(x)」であるという樽本さん。この公式はV=ユーザーの声、F=自己流分析、x=ユーザーの体験を表しています。
つまり「ユーザーの声」は「ユーザーの体験」を「ユーザーが分析」した結果。大切なのは「V=ユーザーの声」ではなく「x=ユーザーの体験」を聞くことにあるとのこと。そこでユーザーの声を聞くだけではなく、体験を集めることにインタビューの力が試されます。
今回のワークショップでは、どのように効果的にユーザーの体験を聞き出していくのかという
マル秘インタビュー手法を参加者全員で実践しました。
第一回のワークショップの内容
- UCD(ユーザー中心設計)とは
- チーム対抗「インタビュー合戦」前半戦
- 弟子の心得
- チーム対抗「インタビュー合戦」後半戦
- 真面目な懇親会
チーム対抗「インタビュー合戦」
二人一組でペアを作り、師匠役、弟子役に分かれます。
それぞれに別々のシナリオが渡され、インタビューによってそのシナリオ内容を
解き明かしていこうというもの。弟子役になった方が師匠役にインタビューをします。
制限時間5分の間に次々に皆が質問を浴びせかけ会場は白熱した雰囲気に。質問の切り口がなかなか見つからず、シナリオ全貌が見えてこないままタイムオーバー。質問の掘り下げ方が難しくて多くの参加者が「数撃ちゃ当たる」方式になってしまいました。
弟子の心得
インタビューを実践した後に、樽本さんからマル秘インタビューの手法が伝授されます。
「弟子の心得」として伝授された手法は次の3つ。
・占い師ではない:推測して当てようとしない。
・点と線:ユーザーの体験はつながっている。
・根堀り葉掘り:少しずつ前に進もう。
インタビュー中に「次はどうなったかな」「その次はどうなるんだろう」と時間軸を意識しながら
ゆっくりと聞いていくのがポイントです。相手がYES/NOで答えられる質問をしないというのも大事な点です。
弟子の心得が伝授された後は、もう一度インタビューを実践。
「インタビューで迷ったときは、一度振り出しに戻ってみることも大切」と樽本さん。
伝授された3つのポイントを気にしながら質問をしていくと、初回のインタビューでは聞けなかった
細かいディテールやストーリーが次々と見えてきます。ユーザーの声ではなく、ユーザーの体験を集めることに
集中することで、シナリオのスタートからゴールへの流れがくっきりと浮かび上がってくるのが分かります。
このワークショップでは講義による基本的な考え方と、ワークショップによる実践を通して多くの「気づき」が生まれています。
新しい「気付き」を増やしていくことが、革新的なアイデアや良いモノづくりにつながっていくことを実感しました。
ワークショップ終了後は「真面目な懇親会」。ワークショップの賑やかな雰囲気のまま、飲み物を片手に
樽本さんの書評レビューによるライトニングトークがあり、参加者同士の交流も弾みました。
幾つかの推薦書もご紹介いただいた中でも、気軽にインタビューについて学べるのが阿川佐和子さんの『聞く力』(文春新書)。
インタビューを行うための心構えについてうまく整理されていて、新書なので読みやすい良書とのことでした。
- 2012年10月〜12月開催
- 小サンプルの質的調査をして、質的データ分析の結果に基づいて素早くアイデアを生み出す――リーン/アジャイルな時代に適した「UXリサーチ」の基礎を習得できるワークショップです。
- Skypeを使った無料オンライン・レクチャーを隔週開催(1回1時間)
- ※希望多数の場合は抽選。後日、録画版の再放送有り。
- ※レクチャー開催の詳細はメルマガにてお知らせします。
- ワークショップイベントを月1回程度実施(有料:各2,000円〜、開催地:渋谷・道玄坂Loftwork Labを予定)
- 詳細は、ワークショップトップページ「ユーザーに弟子入り!アイデアを生み出すUXリサーチ」の「Learn More」からご確認ください。
- 参加は以下の「ワークショップの申し込み」から無料にて参加できます。