地域で活動するクリエイターに、場所へのこだわり、仕事を生み出すヒントを聞いた。THINK-TASTE-ACTION! #02レポート

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26.Apr.2013

今回のテーマは「クリエイター×地域で生み出すポジティブスパイラル」。地域に軸足を置いて独自の活動を展開するクリエイターをゲストに、活動場所へのこだわりや、人々とのつながり方、自らの仕事を生み出すために必要なことなど、実践的なヒントを伺いました。

ゲストは、京都を拠点にデザインメディア「Refsign」を立ち上げ、トークイベントシリーズ「いろいろトーク」を主催するいろいろデザインのサノワタルさんと、京都造形大出身で、小豆島の「地域食」を通じて地域ブランディングに取り組む、デザイナー/醤油ソムリエールの黒島慶子さん。ユニークな活動を展開するお二人に、具体的な事例をご紹介いただきました。また、前回の”THINK-TASTE-ACTION!”で紹介した「クリエイターによる小豆島の地域Tシャツ開発企画、島T計画」の経過報告も行いました。

今回の「美味しい」体験は、貴重な小豆島米と小豆島の木桶醤油で作った佃煮のおむすびです!トークを聞きながら、参加者がその場で学んだことをブレスト形式でシェアしていきます。ボリュームたくさんの、賑やかな夜のレポートが始まります!

Text:服部沙織(株式会社ロフトワーク)

斬新すぎる小豆島Tシャツ、初お披露目!

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まず始めに、小豆島の地域おこし協力隊として活躍している株式会社459の真鍋邦大さんと、Tシャツデザインに採用された京都の漫画家、しろうべえさん、ロフトワークの川村3人によるトークセッション。しろうべえさんは自著の詰まった”おかもち”を持って登場。二人の登場に、会場もざわめきます。

「僕は県外の地域おこしの集まりに出席するとき、小豆島らしさを出すため、木桶醤油屋さんの前掛けをつけていきます。前掛けをつけていることで、名刺を渡した時に、小豆島の宣伝も出来るんですよ」と、笑顔で島T計画のきっかけを紹介し始めた真鍋さん。

「小豆島に住んでいる三万人を営業マンにしたい!と思った。でも前掛けは誰でもつけられない、だから気軽に着られるTシャツが欲しかった。でも従来のTシャツ制作のパターンだと、1.島の中で自主的に制作する。もしくは、2.有名なデザイナーに頼む。の、2パターンしかないんです。それじゃあ、面白くないと思った。”世の中のスゴい作家さん達の力を借りたい”という想いから”ロフトワークのクリエイターポータルloftwork.comで公募したい!”と思い、こうして実現するに至りました。」とも。

他にも、島T計画のいいね数がloftwork.com史上最高の伸び率だったことや、しろうべえさん初の小豆島訪問のお話など、実に盛りだくさん。お二人の活動や動きに沿う形で、元気に楽しくお話が進んでゆきます。

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そして!今日から発売となる、しろうべえさんデザインの”島T”のお披露目が!お二人が脱いだ服の中から、島Tが登場!真鍋さんのイチオシは、後ろの襟ぐりにプリントされた佃煮屋さんのおじいさんです。吹き出しからは、「ワシにかまうな」と一言。シュールな世界観が広がるTシャツとなりました。

また、しろうべえさん自身も、小豆島に訪問する前と訪問した後では大きな変化が。「アート感があって、狭い中にギュッと詰まっている…そんな島だと思った。」しろうべえさんは小豆島に訪問したその後、Tシャツのデザインをブラッシュアップし、島T計画ブログを開始しています。物語は今も、更新中です。

人生をかけて、100年後に続く産業を残したい

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次に、”醤油ソムリエール”兼”グラフィックデザイナー”の黒島慶子さんが登場。なんと黒島さん、上記の2つの他に、”webデザイナー”、”オリーブオイルソムリエ”と、全部で肩書きを4つも持っていることを告白!黒島さんにとって、これらはツール。「肩書きには拘らず、産業を未来へつなげるために出来ることをしていると、自然と肩書きもこうなりました。」と、素敵な笑顔。

実は、黒島さんが小豆島のお醤油をちゃんと意識したのは、20才の時。それまでは、高校、大学とアート漬けの毎日を送ってきたものの、自分の表現に限界を感じることがあったそうです。 「家の近所にいくつもあるお醤油蔵に入った時”これだ”と思いました。直感を信じて調べてみると、小豆島では”木桶仕込”という今では1%を切った希少な伝統醤油の約半数が仕込まれていることがわかりました。気候風土や立地条件や歴史的背景などが伴った”この土地と人で作られる品”。つまり、未来に続く可能性を秘める素晴らしい産業だと思い、蔵元に『続けてください』と気軽に言ったら、『儲からんから難しい』と返事をもらいました。理想論ではなく、きちんと生活の糧となる”産業”とならなければ、そのうち小豆島は無人島になる。未来に続く可能性を秘めているものと、続かないギャップが発生していることを実感した時、『産業を未来に繋げることを一生の仕事にしよう』と決めました。」

小豆島にしか出来ないもの、出来ないことを、人生をかけて残していきたいと思い、”醤(ひしお)の郷”というウェブや、”醤油日記”という、個人でのブログ活動等、様々な形で小豆島を発信。「まだまだ何もできていない」と言いつつも、いろんな方から「どこの醤油蔵のどの醤油がいいか教えて欲しい」と依頼を受ける度に、できることがあると実感しているのを話から感じました。最近はそんな地道な活動が注目されはじめ、テレビや雑誌などのメディアから取材も増え始めたそうです。

京都にはたくさんのレイヤーがある、10年同じ事を続けよう

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そして最後のトークセッションに、「地域」「デザイン」「コミュニティー」をコンセプトにした活動を展開しているサノワタルさんが登場。これまでに行なってきた、飲食店(Osteria tempo)のプロモーションやその他の活動についてお話されました。

4月から独立し「いろいろデザイン」をたちあげ、五条の松原商店街にスペースを借りて、飲食店を作るために活動されています。そんなサノさんが思う”いいデザインの仕事”とは、「デザインする」「広報する」「売れる」の3つの要素が合わさって、初めていいデザインのお仕事だと感じるということです。

特に「京都は、たくさんのレイヤーが重なって出来ている」というお話がとても興味深いものでした。「京都には、たくさんのレイヤーが重なっている。京都で何かを成し遂げたいのであったら、”とりあえず10年続けること”。10年続けることによって、初めてスタートラインに立てる。僕はちょうどその言葉を聞いてから10年が経ちました。」と、会場みんなが頷くような、レイヤー上層部の方とのエピソードを交え、まったりとした空間の中、お話を聞くことが出来ました。

第一部が終わると、仕切りが上がって、炊きたてご飯と佃煮が登場!

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そこには、貴重な小豆島米と、小豆島での醤油で作った佃煮が。握ってもよし、そのまま箸で食べてもよし!さっそく無言でおむすびの山を作るテーブルも。

美味しいご飯、美味しい具材に、参加者さん達も会話が弾みます。賑やかな雰囲気を残したままに、第二部がスタート。モデレータにロフトワーク諏訪を迎え、黒島慶子さん、サノワタルさんの3人でパネルディスカッションが行われました。

食と循環、食と相手を想うこと

二人のゲストは”食”に深い関わりを持った活動をされていたことから、会場からはこんな質問が。

Q.”食”と”クリエイティブ”に関係はあるのでしょうか?

黒島さん「”食”というものを考えると、お野菜を育てる等といった、素材が出来てくるところから始まりますが…実は、関係ないと思っていた物事すべてが深く関わり合っているんです。例えばわたしが醤油に深く関わったからといって、日本全体がよくなることはまずありえない。わたしはお醤油をきっかけとして、人の食の循環に、少しでも寄り添いたいと思ったんです。」

サノさん「食べることって、死ぬまでの回数が決められているので、ご飯を食べるのをサボらずにいこうと思ったんです。回数が決まっている中で、自分が気に入っているものを食べようと思った。その中で自分でお店をしようという考えに至ったのですが…。いろんなお店に行く中で、すごくいいシェフのいる店や、いいオーナーがいる店と出会うというのは、いいデザイナーに会った時と同じ感覚に陥るんです。これは、シャフやオーナー、デザイナーが、ちゃんと相手のことを考えている、相手を想っているということなんです。」

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つながりが、化学反応を呼ぶ

最後は、真鍋さんにこんな質問が。

Q.しろうべえさんとの出会いから得た、新しい小豆島の発見ってありましたか?

真鍋さん「島で頑張っている人がいて、東京で頑張っている人がいる。だけど、それだけじゃ、おもしろい化学反応は生まれない。島で頑張っている人と、その外で頑張っている人とがつながることで、面白い化学反応が起こるんじゃないか。それがしろうべえさんとどう関わってくるかはまだわからないんだけれど。(一同笑)」

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地域を思う人たちが、ギュギュっと一箇所に集まった、第二回目の本イベント。美味しい体験が呼んだ出会いやつながり、ゲストの話から得られたクリエイターの活動のヒントが、小豆島をはじめとした、クリエイティブの力を必要とする地域に新しい風を吹かせることでしょう。食べて美味しい、聞いて美味しい、美味しい尽くしの夜になりました。

◆Flickr


Created with Admarket’s flickrSLiDR.
▲参加者 Iguchi marikoさんのマンガレポート

◆Togetter

◆開催概要

THINK-TASTE-ACTION! #02 クリエイター×地域で生み出すポジティブスパイラル 〜サノワタル(いろいろデザイン),黒島慶子(醤油ソムリエール)〜

開催日:2013年4月19日(金)19:00 – 22:00(18:30開場)
場 所:ロフトワーク烏丸
定 員:30人
出 演:サノワタル,黒島慶子,しろうべえ,真鍋邦大,諏訪光洋
主 催:株式会社459,loftwork

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