こんにちは。ロフトワークのクリエイティブ・ディレクターの重松佑です。突然ですが“KJ法”を使ったことがありますか? 多くの方が会議やワークショップの場でKJ法を経験したことがあるのではないでしょうか。しかし樽本さんは「それは本当のKJ法だろうか、KJ法を使いこなしているだろうか?」と問いを投げかけます。意外と知らない“KJ法”のオモテとウラとは。
2012年11月26日(月)19:00〜21:00に、OpenCUのWorkshop「第2回 実践!ユーザー体験モデリング 〜 “超”ローテク・UXデータ分析法」が開催されました。ワークショップ当日の様子をレポートします!
それは本当のKJ法?
当たり前と思い込んでいることに疑問符を立てる形で始まったワークショップ。樽本さんはKJ法にはよく勘違いされている次の4つの神話があると言います。
1.KJ法は分類手法である
2.KJ法は何となく似たカードをまとめるものである
3.KJ法はAffinity diagram(親和図法)である
4.KJ法は簡単である
ではKJ法とはどのようなものなのだろうか。今まで使っていたKJ法は間違っていたのだろうか。と参加者の顔に困惑の色が浮かびます。そこで樽本さんはKJ法の発案者である文化人類学者、川喜田二郎の著作「発想法」「続・発想法」を基にKJ法の本来の在り方を説明。「KJ法とは元来、因果関係を説明するフローチャートである」と言います。つまり付箋に書きだしたカードを並べるのが目的ではなく「並べたカードから人間の行動パターンを見つけ出す」ことが目的とのこと。
さらに、よくあるKJ法では次のような形で終わることが多いと指摘。
1.カードを出す
2.グループを作る
3.タイトルをつける
樽本さんは、ここにはさらに続きがあることを教えてくれます。
4.再度グループを作る
5.フローチャートを作る
6.文章化をする
KJ法は「知っていること」を「分かるため」の方法。フローチャートまで作成することで、最初に書きだした取り止めのないカード群がまとまって、ユーザーの行動という物語を語りだすような実感が生まれてきます。
今回のワークショップでは、KJ法の本当の姿を知った上で改めて参加者全員で実践しました。これまでのKJ法とどのように違うのだろうか? 会場は期待に膨らんだ雰囲気になります。
第二回のワークショップの内容
・ 本当のKJ法とは?
・ 実践1:山手線をKJ法で分類する
・ 実践2:起床パターンを図解する
・ 真面目な懇親会
山手線をKJ法で分類する
まずは三人一組でグループを作り、山手線の29駅をリストアップします。
リストアップした駅名を「印象別」にグループ化。個人個人の経験から29駅がボードにマッピングされていきます。その次はタイトル作成。グループ化した駅名に「ビジネス街」「おしゃれな街」「ターミナル」など様々なラベルが追加されていきます。今回のワークショップでは全4チームがそれぞれKJ法を行い、ラベルの付け方もそれぞれ。しかし、どのチームでもグループに入りきらない駅名がいくつか出てきてしまいました。「そこにこそKJ法の難しさがある」と樽本さん。つまり駅名は知っていても、その駅のある街のことを知らなければ分類はできない。カードに書いてあることは氷山の一角であり「物事をキチンと知ること」の重要性を実感します。
起床パターンを図解する
次のワークはペルソナ作成に関するKJ法の実践。個人ワークで自分の起床パターンを書き出し、睡眠から起床までの感覚を波形グラフで作成します。作成したグラフを基に他の参加者とシェア。自分と似ている人同士でグループを作ります。グループを作った後はグループ名の作成。「他力本願型」「2度寝型」「刺激蓄積型」など、特徴的なグループが出来上がります。樽本さんは「人間の行動パターンは十人十色ではなく、十人三色〜四色に大きく分けられる」と言います。ペルソナを作成する場合には、それぞれの1グループを1人の人間と仮定すれば、特徴が際立った魅力的でリアリティのある人物像を作れるとのこと。
このワークショップでは講義による基本的な考え方と、ワークショップによる実践を通して多くの「気づき」が生まれています。当たり前と思い込んでいるものを見つめなおし、身近にある物や人と一緒にプロトタイプを作っていく方法は実際の仕事で実践するが楽しみになります。
ワークショップ終了後は「真面目な懇親会」。ワークショップの賑やかな雰囲気のまま、飲み物を片手に自己紹介からソーシャルグラフを作るワークもあり、参加者同士の交流も弾みました。