マルチタレント・サラリーマン 須田英之が明かす社会人の課外活動 後編(全2回)

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13.Oct.2011

農家だってライブをするんです!共鳴で生まれた六本木農園

須田氏が関わる六本木農園は全国の農家・こせがれが作る農業実験レストランがコンセプト。全国からやってくる生産者達と話をしながら食事ができるなど、食の最初から最後までを味わうことができるレストランだ。ITや音楽とは外れ、飲食業と農業だ。

六本木農園 全国の農家・こせがれが作る農業実験レストラン。新鮮な農家直送の野菜料理が食べられるほか、 生産者を招いてのトークショーやワークショップなどのイベントも随時開催している

「六本木農園は実は“SoulVillageSTATION”というサブネームがあるんですが、そもそものキッカケはSoulSwitch Projectから派生した仲間達で、どこかに一軒家と畑を借りて自分たちで有機農業をするSoulVillageを作ろうという話から始まったんです。今、都会で暮らしていると土を触る機会なんてほとんどありませんよね? 普段食べている野菜や果物の殆どが土の中で育んでいるのに、それに触らないでも普通に生活できているんです。ここんとこ太陽がでないから育ちが悪いとか、雨が降らなくて枯れそうだとか、そういう事関係無く一年を通して野菜や食物が買えてしまう。Soulswitchのメンバーは僕を筆頭に食に対するこだわりが大きいのですが、これからの食通はちゃんと作る事も知らないとやばいじゃんねー!って話になって。で、それぞれ農業を始める理由は違いつつも方向性は一致したメンバーが30人弱集まったので、千葉で畑と一軒家を借りてSoulVillageと称して農業を開始したんです。交代で雑草をひたすら抜いてましたよ。どんなに綺麗にしても翌日生えてるんですよ。毎回家に帰ったらふらふらだし腰痛も酷かったんですが、土に触ってると体調は良いんですよね。」と須田氏。

都会の生活では、野菜はスーパーでかごに入れるだけに終始している。野菜は基本的には土がなくては育たないのに、それを食べる我々は土を触らない生活を営んでいる。土という視点で見れば都会の食は不思議で矛盾しているものだ。

「最初は自分たちのために始めた有機栽培だったのですが、続けていくうちに、作った作物を食べられるアジトが欲しいねと盛り上がり始めました。時期を同じくして、六本木の店舗物件で空きがでて、誰かレストランをやってくれる人がいないか探しているという話が飛び込んできたんです。で、SoulSwitch Projectからずっと公私共にパートナーとして活動をしてきた友人が、農家の人たちが作った野菜を直接出せるレストランを作る!って一念発起してSoulVillageSTATIONとしての“六本木農園”が生まれたんです。 そのときに、都会で農業に興味のある若者を育成し、従事させる取り組みをしている『NPO法人農家のこせがれネットワーク』を主催している宮地くん達とも知り合い、全国の農家・こせがれが作る農業実験レストランで、コンセプトも固まりましたね」

農家のこせがれネットワーク 都会で働く農家のこせがれを、実家に返し農業をはじめさせることが、この国の農業活性化につながる、をコンセプトにしている。 都会で養ったビジネススキルを使って、若者が地方で農家として活躍する機会と場を提供するNPO。

ここでも、やはり須田氏はオーナーのサポートに徹する存在。アイデアでその場に重力を与え、人々を惹きつける魅力を作る役回りである。いくつか面白い事例を紹介しよう。

六本木農園では、店内の壁に土壁を採用している。しかし実は土壁は、職人技が要求されるため、業者に頼むと億単位の資金がかかるのだ。そこで株主ならぬ“壁主制度”を採用。壁主としてボランティアで参加していただく代わりに、プロジェクト期間中、六本木農園で珠玉の賄いメニューを提供する。さらに、もし壁が壊れたときは、“臨時壁主総会”が開かれ、その壁を直してくれた人に食事でお支払いしようという仕組み。これなら土壁でも安心、そしていろんな参加者が集まった。

また、不定期で六本木農園ではミュージシャンのコンサートをやっているのだが、それだけではなく、農家の方にもライブをして貰っている。とはいえ、歌ったり楽器を弾いたりする訳ではなく、食材となる野菜や果物を育てる過程での葛藤や生み出した工夫を生みの親として熱く語って貰うというライブだ。このライブは、その食材を口にするお客様が食材に関心を持ちつつ安心感を持てるだけでなく、農家の方々にとっても明日からも頑張って美味しい食材を作ろうという糧になっている。

「SoulSwitch Projectを通じて感じたのは、”自分を持ってるよね”って周りから言われている人ほど、本当に毎日自問自答してるんです。本当にこれでいいのか?って。で、そうやって自問自答している中で少し見えた光明に対してまた頑張る。そういう風に日々を過ごしている人同士って、全然やっている事は違っても、なんか通じるんですよ。空気感が一緒というか、なんか言葉では言い表せない共感がある。

僕はこの現象を共鳴と呼んでいます。六本木農園はオープンして丸二年経ちますが、スタッフの方も農家の方も、不思議と素敵な人が集まるんですよね。内輪の集まりにしようとか閉鎖的にしようとか全く思ってないし、色々お話もいただくんですが、結局継続的な付き合いになるのは、特別な才能を持ってるとか”凄い“って言われている人とかじゃなくて、そうした共鳴を感じる人達なんですよね」

音楽のライブ感と、農業・農家との意外な出会い。客も、農家も一緒になって響きあうことで、全く新しい食の楽しみ方を生み出している。この楽しさが、六本木農園をただの”自然派レストラン“に終わらせない理由だろう。ここでは、今日も何かが生まれ続けている。

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