2014年4月9日、京都の街中が桜満開の晴れやかな日に、ロフトワーク烏丸にてOpenCU「手のひらの小宇宙 〜オリジナル和菓子を作るワークショプ」が開催されました。
和菓子づくりは何だか京都らしいけど、和菓子のテーマが「宇宙」ってどういうこと?そんな不思議で味わい深いテーマに惹かれて、はるばる東京から駆けつけて参加してきましたので、その様子をレポートしますね!(loftwork 井上果林)
▲ロフトワーク烏丸名物、手書きのウェルカムボード!
和菓子づくりユニット「日菓」さんに、基本を学ぶ
まずは、本日の和菓子づくりの先生である「日菓(にっか)」の杉山早陽子さんと内田美奈子さんのお二人から和菓子の作り方をレクチャーしていただきました。
日菓さんは、和菓子をモチーフに色々なテーマの作品を作りながら活動されているユニット。作品を食べられる展覧会を開催したり、和菓子で落語家とコラボレーションしたり・・・。和菓子という伝統的な表現手法の中で造形の美しさや味の良さを守りながら、いかに驚きや新しさのある作品を生み出せるかを常に追求している、笑顔がとっても素敵なお二人です。ちなみに、月1回だけ「月一日菓店」というお店が開かれるとのこと。行ってみたい・・・!(日菓:http://www.nikkakyoto.com/ )
▲日華さんの作品集『日菓のしごと 京の和菓子帖』。見るとほっこりします。
今回、日菓さんにお手本として作っていただいたのは、「アポロ」。黄色く丸い月の上に足跡ひとつ、アポロ11号の月面への第一歩を表現している作品です。
▲月のお菓子、「アポロ」
「アポロ」の実演をまじえながら、「こなし」と呼ばれる生地の扱い方、食紅を使った着色のコツ、白あんの包み方などを一通り学びました。特に興味深いのは、生菓子の表面を装飾していく作業。例えば、生地を茶こしの網で漉すと、じゅうたんのようなモコモコの表面が出来上がります。身近にある道具で押したり切ったりすることで、アポロのようなつるんとした表面だけでなく、幅広い表現ができるんですね。
▲漉し網を使うと一瞬でモコモコの形ができちゃう!
我々はどこから来たのか?宇宙はなぜ和菓子を生んだのか?
次に、京都大学の宇宙総合学研究ユニット特定准教授である磯部洋明さんから、宇宙はどうやって誕生したのか、そしてどんな過程で進化したのかを、話していただきました。念のため補足しておくと、これは「宇宙をテーマにした和菓子づくり」のために知識を深める時間です。
▲太陽よりも熱くマントルよりも深い、磯部さんの宇宙愛!
何十億年の時を経て和菓子を生み出した、宇宙の神秘!
宇宙の始まりは、138億年前のビックバン。初めは水素とヘリウムだけのシンプルな世界で、全てがのっぺりとした霧のような風景だったそうです。そこから少しずつ霧にムラが生まれたことにより、万有引力で物質同士がひかれあい、新しい星が生まれ、核融合が起こり・・・。そんなこんなで徐々に物質が複雑化していくなかで、地球が生まれ、単細胞生物をはじめとする生命体が生まれ、そして人間が生まれてきたわけです。
地球の誕生、生命体の誕生、そして人間の誕生。
文字で書くとたった20文字ですが、それぞれに10億年単位の気が遠くなるような長い時間がかかっています。これは、予め計画されたものではなく、いろんな条件が重なって生み出された奇跡みたいなできごとだと磯部さんは言います。
一通りの説明を終えた後、磯部さんは私たち参加者に問いかけます。
「こんな奇跡から誕生した地球で、今夜、みなさんはどんな和菓子を作りますか?」
・・・重いですセンセイ(笑)。でも確かに、私たちは今夜、一同に会して和菓子をつくることで宇宙の歴史をひとつ塗り替えるわけです。なんて奇跡的な日なのでしょう!
宇宙を和菓子で表現する
さて、宇宙の奥深さを味わったところで、いよいよ和菓子作りワークショップに入ります。まずはどんな和菓子にするか、紙にデザインラフを描いていきます。
ラフを描いたら和菓子作りスタート。初めは練習用の生地でつくりたい色や形を表現していきます。色をつけて、コネコネして、形をつくって・・・。手のひらサイズのちいさな和菓子をひとつ作るのが、なかなか難しいのです。参加者のみなさん、ラフをどう表現できるか日菓さんからアドバイスをもらいながら、真剣に取り組んでいます。繊細で地道な作業が続きます。
ここで、磯部さんと日菓さんから教わった、「宇宙をテーマにした和菓子をつくるときに意識しておきたいポイント」を2つご紹介します!
宇宙をテーマにした和菓子づくりで注意すべきポイント
宇宙レベルの視点で!
磯部さんは京都精華大学でも教鞭をとっており、「宇宙をアートで表現する」という課題を毎年出しているとのことなのですが、毎回、惑星を擬人化したキャラを作る学生がかなりの数いるとのこと。擬人化って確かに思いつきやすいし楽しい表現手法なのですが、磯部さん曰く「宇宙の魅力は、天体でも生命でも宇宙人でも、自分の身の回りではあり得ないような世界が現実に存在しているかもしれないこと。『神秘的できれい』みたいなありきたりのイメージではなく、宇宙レベルに違った物の見方を表現してください」。
美味しそうなデザインを心掛ける!
「宇宙」という壮大なテーマですし、ついつい自由な発想が膨らみがちですが、和菓子は和菓子。粘土細工ではないので食べものとして美味しそうなデザインでなければいけません。日菓さんも、伝統的な手法をきちんと守りながら、これまでにない新しい表現をしていくチャレンジを常に続けているそうです。制約が生み出す美を楽しみましょう。(練習ではミドリムシをつくってしまってごめんなさい・・・)
▲参加者のみなさんの練習作。美味しそうな色合いに苦労しました・・・(中央がミドリムシです)
和菓子でつくる、宇宙のカタチ。やっぱり想像以上だった
作業すること1時間、全員の作品が完成し、発表の時間になりました。一人ずつ、作品タイトルとコンセプトを発表していきます。作品は、マントルやあかつき、生命体といった地球や宇宙のモチーフを表現した作品から、宇宙の卵、宇宙の広がり、宇宙の割れて血が出た姿などイメージを膨らませてデザインしたものまで。アイデアのバリエーションが豊かです。全ての参加者の作品について、日菓さんと磯部さんそれぞれの視点からのコメントをいただきました。
各々の心を射抜いた宇宙×和菓子とは、各賞の発表。
全体発表の後は、ロフトワーク、磯部さん、日菓さん、それぞれの賞の発表です。
(左から、ロフトワーク賞・京都大学 宇宙ユニット賞・日菓賞)
限られた時間でのワーク、皆さんおつかれさまでした!
食べれば、なくなる。全てが無になる瞬間に立ち会う
最後は美味しいほうじ茶と一緒に作った和菓子をいただきます。みなさん「もったいない~」と言いながらも、ものの2~3分で、パクパクと自分の作品を平らげてしまいました。
日菓の内田さんは「どんなに美しくおいしい和菓子でもずっと飾っておくことはできないもの。最後はすべてが無(お腹の中)に帰してしまう儚い世界観も和菓子作りの妙味」とおっしゃいます。
悠久なる宇宙と、目の前から一瞬にして消える和菓子の儚さの両方に思いをはせる、不思議で素敵な春の夜なのでした。(fin)
宇宙の奥深さと和菓子の表現のむずかしさを両方体験できる貴重な時間になりました。
ちなみに私(井上)の作った和菓子の作品はコレです。

たった2つの元素から生まれた宇宙が、これほどまでに複雑化・多様化していることへの驚きと、その中で自分という存在が何なのかを考えながら作った作品です。作品を見せた同僚達にはなぜか苦笑いされましたが、日菓さんからは「きれいにまとまりましたね!」、磯部さんからは「宇宙だけ表現するのでなく、宇宙と自分という関係性を表現しているのがいいですね」と褒めていただけたので、私自身は大満足です。