「Web制作プロジェクトをうまく進めるために何を考えていますか?」〜イベントを経て登壇者3名による座談会

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04.Oct.2012

Web制作のプロジェクトが、他社ではどんな風に進めているのかを知る機会って、なかなかないものです。先日、OpenCUにて行われた「Webプロジェクトをうまくいかせる“技”をみんなで披露!〜8/23失敗しないWebサイト制作イベント」。同イベント内のワークショップでは、Web制作に携わる来場者の皆さんが日頃実践されている “技”の数々が披露されました。中には、「なるほど!」と目からウロコなものや、「ナイスアイデア!」と思わず真似したくなるものが、出てくる、出てくる。そこで、イベントに登壇されたキヤノンマーケティングジャパンの増井達巳さん、『失敗しないWeb制作』(ワークスコーポレーション)の著者みどりかわさん、ロフトワークの滝澤が再び集まり、イベント参加者から出た“技”を検証しながら、現在のWebディレクターなどプロジェクトを推進する者に求められるスタンスや、プロジェクトマネジメントを失敗させないためのポイントについて話ました。
取材:OpenCU編集部、Text:野本纏花

<座談会メンバー>
みどりかわえみこ
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 ウェブマネジメントセンター所長 増井達巳
株式会社ロフトワーク チーフクリエイティブ・ディレクター 滝澤耕平

 

プロジェクトに魂を入れたい!? Web制作を取り巻く環境の変化

まず、口火を切ったのは、増井さん。技の書かれたシートの全体の傾向についての傾向分析からでした。

増井 プロジェクトマネジメントって、何となく“リソース管理”や“スケジュール管理”といった技術論やツールになりがちなんですよね。魂が入らない。でも、皆さんから出た技を「品質」「スコープ(要件定義)」「スケジュール」のカテゴリーで分けてみると、「スコープ(要件定義)」が一番多かった。きっとこの辺りで皆さん苦労したり工夫したりされているのかなと思うんですけど、“魂を入れよう”という意気込みがあるものが多かったので、これって良い傾向だなと思いました。

みどりかわ プロジェクトマネジメントをやっていると、どうしても管理者っぽく見られて、みんなからよそよそしくされたり、遅くまで1人でフォローに回ったりして、ちょっと「孤高の人」感というか…。イベントに参加された皆さんが望んでいる方向性って、人っぽさとか、あったかい感じなんだと思います。「これがすごい技だぞ!どうだ!」っていう“フレームワーク自慢”が意外と少ないですよね。

増井 プロジェクトマネジメントに魂を入れなきゃいけないっていう思いが強くなった背景として、Webの制作環境がここ5年〜10年で大きく変わってきているからだと思います。昔はWebのプロジェクトって、丸投げするところが多かったじゃないですか。それが今は、クライアントもかなり制作会社と深く関わるようになってきたり、社内プロジェクトでも関係者がWebについて口を出したい人がいっぱい出てきて、意見を聞かないといけない人が増えてきたりね。

みどりかわ Webディレクションの経験を積んだ人が一般企業に転職するっていうケースもきっとあるでしょうし。

増井 そう。そんな業界の構造自体の変化が、“プロジェクトに魂を込めよう”という意識に影響しているのかなという気がしますね。

みどりかわえみこ

「コミュニケーション=仲良くなること」ではない

みどりかわ 最近では発注者が制作会社とがっつり組んで、一緒にプロジェクトを進めるケースもあって、発注者の中には情報を開示したい、立ち話や会議を近くで聞いてほしいっていうニーズがあるのかなと感じますね。

滝澤 まさに私も今そういう感じでプロジェクトをやっています。ロフトワークは、今までオンラインでいかに効率よくプロジェクトを進めるかということにチャレンジしていたんですけど、最近では規模の大きいクライアントが増えてきたこともあって、“同じ場所にいること”が求められることが多いです。

みどりかわ 実はそれちょっと怖いですけどね。ある意味、属人的。「自分が抜けても回るようにするのがプロジェクトマネジメントだ」とイベントで話ましたが、どうしてもプロジェクトをうまく回せば回すほど、“その人だからこそ話が通る”っていう付加価値が上がっちゃって。

増井 技の中に<相手の立場に立って考える>っていうのがありましたけど、残念ながら、制作者側、発注者側もみんながやったらたぶん失敗しますね。人の好き嫌いでコメントの重さが変わっちゃうから。そこでPMBOKが機能する。自分の立場や役割をはっきり決めた上で言いたいことを言い合えますから。

みどりかわ 「仲良くなったところほど強く、それ以外が弱くなる」のは、リスクだと思います。しかも、仲良くなったからこそ何かあった時のひっくり返り方も大きそうで怖い。楽しくするのは重要ですが、責任分担やリスクの識別っていう視点は置いておいちゃダメですよね。

滝澤 ほんとうに気をつけないと、属人化する原因になりますしね。

みどりかわ 「コミュニケーション=仲良し」でないですから。プロジェクトでリスクを拾って、要望をかなえるために動く上で必要なビジネススキルが、プロジェクトマネジメントにおけるコミュニケーションだという認識を持つことが重要ですね。

楽しみながら品質を保つ秘訣は“見える化”すること

滝澤 先日のイベントに参加していたスタッフが、さっそく“チーム新聞”を作ってクライアントのところへ持っていったそうなんです。中身は「この先、コンテンツの移行が山場だ」とか、「今週のチームのみんなはこんなことしてます」みたいな制作者側の近況報告だとか。ちなみに、『セクシィ新聞』っていうタイトルなんですけど、このプロジェクトのスケジュールが超タイトで際どいからっていう理由で。

みどりかわ あぁ、ありました。際どいことを“セクシー”って言い換えて、楽しくするハックみたいな。

滝澤 まさに、そういう。お客さんからもウケが良かったそうです。

増井 いいですよね。正直、議事録なんて見ないですもん。回覧しても、実は誰も見てないことが多い。理由はドキュメントのフレームを作ったらそこから外れない人が多過ぎてとにかく長いんですよ。言いたいことが何ページにも分散していたりするから把握もできないという。

みどりかわ そこで“セクシィ新聞”って書いてあるメールが来たら、開きたくなりますよもんね。ただ、担当者間でこそこそ楽しくやるんじゃなくて、できれば意思決定者とか上の人も巻き込みたいですよね。

増井 “チーム新聞”みたいに、“見える化”するようなものは良いですね。全部“見える化”していった方が良いと思います。気持ちを汲み取るとか精神論は一見良さそうに見えるけど見えなくするリスクもある。結果としてプロジェクトにとっては良くないわけです。

みどりかわえみこ

2001年より、Web制作会社と企業のWeb部門とを渡り歩いたのち、「情報の整理と企画」を軸に育児総合情報サイト、人材派遣会社の求職者向けサイト、旅行代理店のSNS、会員向け商品検索サービスなどを手がける。制作請負ではなく要件定義から情報設計、制作ディレクション、運用までを見据えてプロジェクトマネジメントにあたる。特技は料理、趣味は飲酒。

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増井達巳

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 ウェブマネジメントセンター所長

1980年オフィスコンピューターの直販営業で入社。その後、システムズエンジニアへ担当業務を変更。1983年から約10年間で100社以上のお客様向けアプリケーション開発を経験。システムズエンジニア本部統括部門,オープンシステムSE部門ほかを兼務する。1999年に,新規事業推進本部に異動、2000年から始まった経営情報改革プロジェクトでは,プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の統括メンバーに。その後、同プロジェクト内で企業におけるWeb活用の重要性を検討するWeb分科会のPMを経て2001年1月より現職であるウェブマネジメントセンター所長に就任する。独自のWebマネジメントプログラム理論を基盤に構築したWebガバナンスのノウハウには定評があり、各種講演会ならびにコンサルティングを行う。

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滝澤耕平

株式会社ロフトワーク チーフクリエイティブ・ディレクター

京都大学卒業後、大手出版社を経て2007年にロフトワーク入社。主に中規模から大規模のCMSサイト構築や、アバター制作をはじめとしたコンテンツ制作・運用も担当するなど幅広いジャンルのクリエイティブディレクションを担当。難易度の高いプロジェクトを手がける一方で、プロジェクトマネジメントや仕事術をテーマとした執筆・講演活動も精力的に行う。2011年、チーフディレクターに就任。ディレクション業務に加え、クリエイティブdiv.全体の牽引役として活躍中。
行政サービス情報の標準化・オープン化を目指す、Web関連13社合同OpenUMプロジェクト副事務局長。

【主な仕事の実績】
明治大学 CMS導入全面リニューアル(2011年)
R-online “The Shop” レナウン ショッピングサイト新規構築(2010年)
株式会社Z会 オフィシャルサイトCMS導入(2009年)
「ミクシィ年賀状」デザイン制作(2008年)

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