危機的な状況にも迅速に対応できるWebチームの心構え
増井氏は先の震災から「自分たちが“できている”ことではなくて、いかに“できていないか“を知ることの重要性」を学んだという。氏の率いるキヤノンのWebチームでは、震災の発生時から、自分たちの行ったことを全て記録し、今後のWeb運営に役立てている。このような冷静さこそ、どんなときにも止まらないWebサイトを運営するポイントである。
「Webの担当者の仕事は、小さな仕事の積み重ね・繰り返しで、やや短調なところがあり、日々の作業に追われていくと、だんだん本質的な見方ができなくなります。つまり、他の部門で作られたコンテンツなどをWebに上げるだけの“下請け“のような発想に陥ってしまいがちなんです」と増井氏。
思えばWebサイトには、平常時・緊急時を問わず、一般ユーザーはもちろん投資家やインフルエンサーなど様々な人が訪問する。つまり企業の顔であり、その維持・制作は企業活動にとって重要となるのだ。
「 “コミュニケーションのプランナー”であることをチームには常に意識させていますね。作業者ではなく、自分たちは社外コミュニケーションの最前線に立ち続けるということがミッションだと。そのため、Webチームとしてのモチベーションの明確化という点においては、今回の震災は学ぶべき点がとても多かったように思います。平常時は自分たちのできているところを確かめるだけで事足りますが、危機的な状況では、いかにできていないかが見えてきますし、それが企業活動の存続すらも左右しかねません。そうした状況だからこそ感じられた使命感も、結果的にWebチームのモチベーションを大きく高めてくれました。どんなときでも、“できていないこと”を正確に把握し、使命感にモチベートされて動いてゆけることが何よりも大事だと考えています」
企業を背負っているという使命感を、平常時から感じて動けるWebチームは強く、そして有事にも動じない。増井氏はそれを実践している。
工夫その4 Webサイトが企業の顔でもある現在、Webチームは自らが企業の存在までを支えていることを意識する
工夫その5 平常時から“できていること”よりも、“できていないこと”を把握することで、有事に冷静に対応できる