ものづくりカフェは、「作り手」と「使い手」が出会う場所
岩岡: FabCafeはオープンしてまだ3ヶ月ほどですが、月に2,000人以上のお客さんに来ていただいています。9割強がカフェ利用者で、実際にものづくりをするのは1割弱です。ですが、レーザーカッターがあることで、普通のカフェではないようなお客さんとの会話が生まれていることは間違いありません。カフェとして利用されている方でも、レーザーカッターを使って誰かが何かを作り始めると、身を乗り出すんですよね。そういうお客さんを見つけると、こちらから声をかけて、見学できる環境を作ってあげます。そうすると、レーザーカッターの周りに人だかりができる。そんな風にオープンな雰囲気の中で、クリエイターの方がリアルに「いいね!」と言ってもらえる場所を作りたかったんです。
吉弘: レーザーカッターがあることでコミュニケーションが生まれる、というのは、すごくいいなぁと思います。ガジェットカフェのコンセプトは“テクノロジーと日常のマッシュアップ”。インターネットの世界もソーシャルメディアによってリアルなコミュニケーションへ移行しているように、今までは「作る場所:工場」と「使う場所:家庭」が離れていたけれど、ものづくりの世界でも、これまで結びつかなかった人が交わる土壌ができて、作り手と使い手が近付いて来ていますよね。実際には、最近パーソナルなものづくりが脚光浴びる前から、技術と日常を結びつけようとしているビジョンを持ったクリエイターはたくさんいたんですよ。だけど、みんな孤独にやっていた。ガジェットカフェでは、そういうクリエイターを主役にしたイベントを開催することで、何かおもしろい化学反応を起こしたいと思っています。
岩岡: リアルに集まるからこそ生まれる化学反応って、絶対ありますよね。そのためには、場所を持っているということが、とても大事。オンラインでアイデアを出しても、アウトプットされないまま眠ってしまうのはもったいないですよね。リアルに集まってアウトプットに落とし込める場所があるというだけで価値がありますよね。
小室: 確かにそれはありますね。はんだづけカフェでも、お客さん同士で試行錯誤する時間を与えられたら良いなと思っています。足を運ぶことで何かひとつ持って帰れるような場所にしたいですね。
コミュニケーションを生み出すための「何もしない」という選択肢
ものづくりを通じたコミュニケーションを生み出すとはいえ、ものづくりとかけ離れた門外漢の「使い手」を巻き込むためには、相応のハードルがあるのではないか。ものづくりができる空間を提供しながら、「作り手」と「使い手」を近づけるためのチャレンジが続けられている。
吉弘: 例えば公園に子供が2人いて、何もなければコミュニケーションが生まれないが、シーソーを置けばコミュニケーションが生まれますよね。そういった“何か”が、FabCafeのレーザーカッターであり、はんだづけカフェの機材であり、ガジェットカフェのイベントであり。ものっていうのは、コミュニケーションの円滑材料になる。
岩岡: ただものがあるだけでは、コミュニケーションは生まれない気がしています。きっと吉弘さんというていうファシリテーターがいることで繋がるんだと思います。ある程度は、型として道筋を設計して用意してあげないと、意図通りの使われ方はしないんじゃないですかね。
吉弘: あぁ、なるほど。確かに、ガジェットカフェではイベント中にはまったくコーディネイトしませんけど、すでに共通の興味をもった交流しやすいメンツが集まっていて、絶対交流するだろうっていう仕掛けを作っている。そこまで持っていっておいて、ぼくたちは何もしないというのが良いのかもしれない。