こんにちは、OpenCUディレクターの長者原です。2012年のOpenCUは、リーン、アジャイル、プロトタイピングをキーワードに、「集まって考える」「集まって形にする」といった“手を動かす”ワークショップに力を入れてきました。立場や考え方もさまざまな人が一堂に介し、1つの目的に向かって思案し、会話し、アウトプットをしていく一連は、机上の学習以上に身になり印象にも残ります。
企画を考えていく上で、“料理ってクリエイティブな作業だよね” “集まって1つの料理を完成させる、つまり、ハッカソンを料理でやってみる!”と、話題が浮上。早速調べたところ、米国ではチーム対抗で作る“MixJuice Workshop”がポピュラーであったり、”Cookathon” なる言葉もあるほどの盛り上がりをい見せているよう。クリエイティブと料理の相性も良さそうということで、OpenCUで実践してみることにしました。
テーマは、うーん…。みんな好きな“カレーで!”
では、教えてもらうのは? カレー&スパイスといえば、東京カレ〜番長!!!
ということで、実現しました。東京カレ〜番長のメンバーとしてお馴染み、スパイスのプロフェッショナルである水野仁輔さんに相談し、”スパイス調合”をハックするワークを2012年12月7日に実施しました。
インド人ならみんな知っている!?カレー作り7つのステップ
2012年12月8日の夜、会場はお馴染み渋谷・道玄坂のloftwork Labのキッチンスペース。事前に参加表明した一般メンバーとロフトワークのスタッフが参加し、いよいよスパイスのハッカソンが幕開けました。
全体の流れはシンプル。カレーとスパイスについてのお勉強後、チームワークでスパイスを調合。キャッチコピーと共にプレゼンし、お互いのカレーを食すのみ。
ただ、闇雲に行なってもさんざんな結果となることもあるため、ここは本家、Hackthonマナーに従い、簡単なルール決めて、その中でチームのクリエイティビティを発揮していく設計を入れてみました。
主な流れは、以下。
1)7つのステップが基本〜カレーの作り方レクチャー。
2)使用するスパイスの説明。
3)チームでスパイスを体感&調合。
4)完成したスパイスにキャッチコピーを付け発表用にレシピを決定。
5)準備したベースと混ぜて、カレーに仕上げる。
6)お互いに食す。
それでは、レッツ!スパイスハッカソン!
まずは、スパイスやカレーに広い造詣と、多くの経験に裏付けされた水野さんが“インド人だと誰でも知っているカレーを作るため7つの工程”を伝授。これはカレー作りにおけるフレームワーク。
水野さん曰く「フレームワークの仮説を立て、インド料理店に週5で通いコックにヒアリングして確信した」という鉄板フレームワークは、シンプルかつ重要でした。暗唱できるくらいしっかり覚えたい基本の考え方です。
ステップ2 玉ねぎ+2G(Ginger&Garlic)
ステップ3 トマト+塩
ステップ4 パウダースパイス
ステップ5 水+ココナッツミルク
ステップ6 具材(お肉、魚介、野菜など)
ステップ7 仕上げスパイス(香菜が代表)
今回、スパイスハッカソンで扱ったのは、ステップ4のパウダースパイスの調合。ちなみに各ステップにノウハウやポイントも存在するが、今回は水野さんがデモ調理を見学して解説いただくことなりしました。
水野さんが強調していたのは、玉ねぎの炒め方。「ここには正解はないんです」。実際にインド人も多種多様なやり方でこの工程を行うらしいですが、意外であったのが、「焦げても強火で放置」の炒め方。香ばしさを出すために意図的にある程度焦がして、水を差し水のごとく入れると甘みが増していくのだという。
基本7つスパイスを調合しオリジナルスパイスを作成
スパイスハッカソンの醍醐味は、奥深いスパイスの世界に五感で入り込んでいくこと。以下の7つはカレー作りの基礎に欠かせない、パウダースパイスの代表選手になります。比較的、手に入りやすいこともあり、スパイスビギナーはここから始めよう、というランナップ。水野さんが持参した、持ち運び用スパイスケースにもレギュラーでセットされていました。
・カエンペッパー :赤くてすごく辛い
・クミン :香りが豊か
・コリアンダー :爽やか
・カルダモン :さらに爽快感あり
・グローブ :いわゆるインドカレーっぽい味付けに
・フェヌグリーク :苦味を加える、インド人が好む
上の4つは基本中の基本。いわゆるカレーを形成するもと。下の3つは“インドカレーっぽさ”を加味するために調整していくものと考える。
これらをミックスして、4人前のカレーにするためには「大さじ2」の分量用意することなる。大さじ=小さじ3なので、小さじを4つに区切った単位を示したシートにメモしながら、チームに分かれスパイス調合を行なっていきます。
苦味や辛味が強すぎると食べにくいため予め控えめに設定などの簡単なルール以外は自由。直感に近い作業ですが、スパイスの役割や香りの印象から、自分たちの目指すカレーに向けたスパイシングが行われていきます。
完成したスパイスは、予め用意されたステップ3までの工程に合流させ、水野さん自らステップ5,6,7を行いカレーへと完成させていきます。今回、時間的な制約から火の通りやすいひき肉(豚200g,鶏100g)を採用。6つのチームの6つの鍋が揃い踏みして、いざ実食へ!
いざ実食。チームごとのスパイス調合で味の違いを実感
お互いのカレーとレシピ表を眺めながら味の印象の違いに感嘆する会場の参加者。例えば、爽やかカレーを狙ったカルダモン多めのチームは他のチームに比べやはり爽快感ある味に、フェヌグリークやグローブが多めのチームは、薬膳っぽい不思議な深みが印象的でした。
水野さん曰く「実は、スパイス調合だけで正解や秘伝というものでない。スパイスの調合と7つのステップ(の中身)を探求することで、何通りにも変化するのがインドカレー」だという。今回、スパイス調合を切り取ってその変化を体感したことで、スパイスの組み合わせの楽しさと「探究心」が芽生えてきました。やはり、料理は五感を伴う最高の“学び”であることも実感できました。その他、本場インドでの体験話や各チームのカレーの印象を「南インドに多い配合ですね」など
カレーというフォーマットに、作り方(フレームワーク)とスパイス調合(クリエイティブ)の工夫次第で、いろいろな表現ができることが今回の収穫。実際にハードルも高くはなく、基礎知識を得たことでチャレンジしたい欲が強くなりました。初めてのクッキングワークショップに、良い感触を近んだと共に、ぜひ、さまざまな料理に応用していきたい楽しい試みでした。料理に興味がある人はもちろん、苦手意識が有る人もこんなきっかけで世界が開けると楽しそうです。今後のクッキングハッカソンシリーズに乞うご期待ください!