キロク学会は、Web時代の「記録とコミュニケーション」を考えながら実験するゆるやかな学びのコミュニティ。今年3月にキックオフイベント「キロク学会 #00」を開催したところ、キロクにまつわる悩みや解決法を求める人々で満員御礼。イベントの盛り上がりと皆さんの熱気に応え、2014年6月4日に”記録魔”なゲストによるプレゼン&参加者全員によるワークショップと題して、本格始動しました!本日はその開催レポートを学会メンバー前田考歩がお届けします。
http://opencu.com/events/kiroku-gakkai-01
日 時:2014年6月4日(水)19:30〜21:30
会 場:loftwork Lab 10F
プログラム
・企画者よりご挨拶
・1部:ゲストによるキロク芸プレゼン
・2部:キロクにまつわる悩み解決ワークショップ参加者
参加者数:35名
参加者の職業(抜粋):プランナー、企画営業、大学生、デザイナー、カメラマン、編集者、ライター
参加者の業界(抜粋):広告代理店、ファッション、小売、EC、デザイン会社などなど
今回のイベントは2部構成。ゲストによるキロク芸の紹介プレゼンテーションと、参加者のキロクに関する悩み解決ワークショップ。キロク芸はNPO法人Art&Society研究センター 井出竜郎さんと、PechaKucha Night グローバルチームのJohnny Linnertさん&鈴木真理子さんに披露して頂きました。
◎走りながらアーカイブするためのツール ~アートアーカイブキット
プレゼン1組目はNPO法人Art&Society研究センター 井出竜郎さんによる、「アートプロジェクトをキロクする!アートアーカイブキットの挑戦」。アーカイブキットの制作経緯や具体的な使い方、制作の苦労話までご紹介頂きました。
アートアーカイブキットはArt&Society研究センターが東京文化発信プロジェクト室との共催事業として、「地域・社会と関わるアート」に関するアーカイブのプラットフォームを創出することを目的に、2010年に始まったP+ARCHIVEというプロジェクトの成果物です。
アートプロジェクトに限りませんが、自分たちのプロジェクトをアーカイブしていく事に時間的人的に余裕がなかったり、そもそも記録することに重きを置いていなかったりという現場の現実を踏まえ、アートアーカイブキットは記録をめんどくさいもの、大変なものと思わずに、記録していく事の良さを知ってもらえればという気持ちで作られた、井出さん曰く「走りながらアーカイブするためのツール」なのです。
実際にこのキットを使用してアートプロジェクトをアーカイブしてみたところ、当初はプロジェクト現場の忙しい中で記録を残す困難さから、現場からは手一杯で対応できないという声が挙がったそうですが、アーカイブすることを意識して活動した結果、いつもより多くの資料が集まったそうです。
そして、ここで残された資料が豊かなプロジェクトの軌跡となり、 モノのとして残った資料から現場の空気感などが伝わって、オーラをまとっているように感じられたのだとか。
キットの力を活用することで、記録のプロセスや整理のためのスキルを、よりシンプルに行なうことができ、「自分達の活動をどう残していきたいのか?」といった事を考えるキッカケになったり、自分の中からモチベーションを生み出せるようになり、脳ミソと体がアーカイブ体質になれそうです、キットと使い方はP+ARCHIVEのWebサイトからダウンロードできるので、ぜひお試し下さい。
その他、キット作りで特に大変だった事として、「専門領域のボキャブラリーと現場で使えるコンテンツのすり合わせ」が挙げられました。アーカイブ活動においては必要な用語と知識だけれど、ハードルを高くしすぎないように一つ一つ取り組んだそうです。
ちなみにキットづくりのプロジェクトは今も進行中。現場からのフィードバックを貰ってさらに精度や使いやすさを検討し、発展させていきたいと考えているので、実際に使ってみた方がいればぜひご参加下さい。
◎ローカルな場所でローカルのクリエイティブな人を発見してグローバルに伝えていく
2組目のプレゼンターはPechaKucha NightグローバルチームのJohnny Linnertさん&鈴木真理子さん。世界750都市で開催されているプレゼンイベントPechaKucha Nightのアーカイブ方法を、20枚のスライド×20秒で説明するPechakucha方式で披露頂きました。
PechaKucha Nightは日本を拠点とする建築事務所クライン・ダイサム・アーキテクツの代表であるアストリッド・クライン(Astrid Klein)さんとマーク・ダイサム(Mark Dytham)さんによって2003年に創設されました。東京から始まり、今では日本で23都市、世界757都市で行われており、東京では200~400人規模ですが、最大でイスラエルのテルアビブで4000人を動員するというビッグイベントになっているのだとか。
Pechakuchaではこのプレゼンイベントを通じ、ローカルの場所でローカルのクリエイティブな人を発見し、グローバルに伝えていくことを目的にしており、その目的を達成する上で重要なのが各人のプレゼンのアーカイブでした。そこで、このプレゼンをアップロードし、閲覧するための新しいWebサイトを作ったのです。
各都市で開催されるPechaKucha Nightはシティオーガナイザー(※以下オーガナイザー)と呼ばれる方が運営されており(※グローバルにおけるPechaKuchaはクラインダイサムアーキテクツが主催)、オーガナイザーはこのWebサイトから自身のシティページが作れるようになっており、そこにプレゼンファイルをアップできるようになっています。
ただ、こうしたアーカイブのためのツールの導入にもいくつかの課題があったそうです。一つ目がITリテラシー。
全てのオーガナイザーがこうしたITソリューションに詳しい訳ではないので、チュートリアルビデオ等を作ってサポートはしていますが、新しいソリューションの導入においてはそれを使用できる人のリテラシーに合わせているそうです。
二つ目がグローバルに展開するが故の言語の問題。こちらについては、今後クラウドを利用した翻訳を使い、他言語化していきたいとのこと。
までまだ不十分との事で、クラウドファンディング等を使って、ローカライズを推進していきたいそうです。
三つ目がプレゼンの表現について。現在はプレゼンの写真(スライド)しかアップできないため、今後は動画や音楽なども取込められるようにしていきたいとの事。
ちなみに、2014年6月25日にPechaKucha Nightが六本木で開催されるので、興味のある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。http://www.pechakucha.org/cities/tokyo/events/5386a8c6bfb6ff745b000001
◎開眼せよ!私のキロクソリューション
イベントの第2部は、合同会社++による「キロクにまつわる悩み解決ワークショップ」。
ゲストプレゼンの開始前に、用意されたワークシートに3分で「キロクに関する悩み」や「参加理由」 等を書き込んでおきました。
このワークシートを使って同じテーブルになった人同士で自己紹介(一人45秒)を行った後、事前に配られていた付箋に、ゲストプレゼンの聴講時に気になったキーワードや発見などを書き溜めたものをテーブルのA3用紙にぺたぺたと貼っていきます。
無作為に貼られた付箋を今度は分類。
付箋に書かれている内容が重複しているモノは重ね、近いものは近づけていき、ベースのA3用紙に文字や線などを追加してグルーピングができたら、そのグループ(島)に名前をつけていきます。
この作業で作られた付箋の島々が、まさにチームで共有したことの記録。これを他のグループで作られたものも鑑賞します。
(みんなのキロク作品を鑑賞して愛でる・・・、愛でタイム!)
各チームのキロク島の鑑賞後、「フリーメーソン式発想シート」を使って、自分のキロクに関する悩みを解決するアイデアを考えていきます。
ここでは、A3用紙に張り出した付箋から、以下の3点をシートの三辺に書きだしてきます。
1.自分の悩み(難しいと感じたこと)
2.ゲストの悩み/課題
3.ゲストのグッドなところ/マネしたいところ/共感するところ
これを書き終えたら、三辺をチラチラ見ながら、中心部に思いついたアイデアをキーワードや文章、イラスト等で書いていきます。すると、何ということでしょう!?
参加者のみなさんのキロクに関する解決案、すなわち第3の目がどんどんと開いていくではありませんか!
こうして考えたアイデアを各チームでシェアしてから、最後のワークシート「これで解消!キロクのお悩み」に書き込んでワークショップは終了。
参加者のみなさんがどういった悩みに対し、どんなアイデアを考え付いたのか一部紹介しましょう。
なおテキスト形式にまとめた全データは下記Google docsで閲覧できますので、よろしければご参照ください。
参加者のみなさんの感想:
みんなで育てるキットを真似してみようと思う。参加型のアーカイブのサイトを作ろうとしている。何を記録するというルールを決めても、実際に参加する人によってはやりたい事が異なるかも知れないので、そうした意見も反映できるようにしたい。
仕事のイベントで撮影してどんどん溜まっていく写真、動画の扱いに困っていた。今日のワークショップでキロクする前に分類する箱を作ろうと決めた。
アーカイブが苦手だけど大きなプロジェクトをやっていかないといけないので、アーカイブオーラを発揮するコンテンツ作りをめがけてやっていきたい。フォーマット、縛りや決まりの中で作っていくという方法が参考になった。
イベント終了後の懇親会もたいへん盛り上がり、次回のキロク学会への期待が高まる中、主催者の一人である小倉ヒラクさんが気になるメッセージを残していました。
・・・なんだ?
何に驚くんだぁぁああ!?
という訳で、キロク学会#02もどうぞお楽しみに!
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