コミュニティづくりの実践を、先人たちともに明らかにするトークセションの第二弾「コミュニティづくり始点と視点#02」が2017年11月16日に開催されました。今回のキュレーターはMORE THANプロジェクトや長野県・諏訪市の技術発信を行う「SUWA Design Project」を牽引する株式会社ロフトワークの二本栁友彦。”前々から話を聞いてみたかったお二組をゲストに”ということで、株式会社リビタの北島優さん、gift_labの後藤寿和・池田史子さんを迎えての開催となりました。前半は二本栁も含めた3組のプレゼン、後半はクロストークの二部構成。前回に続き、実践者ならではのリアルな声を聞ける場となりました。その様子をOpenCUの長者原がリポートしていきます。
前回「コミュニティづくり始点と視点#01」からちょうど7ヶ月経っての開催。冒頭でイベントのモデレーターであるOpenCU長者原からこの取組みのおさらいをしました。
「私自身も、OpenCUという学びのコミュニティをつくる立場であり、さまざまな人の工夫について聞ける機会があるといいなと思い自ら場を企画しました。<始点と視点>は、考えるための補助線です。多くのプレゼンでは結果を聞きますが、ここでは、始点=起こり、視点=実践や形態、という観点をキーワードに、ゲストの実践を要素分解します。そして、毎回、参加者も多彩な人ばかりです。同じ目的を持って参加していることで、この場自体がコニュニティ誕生の場になれたらうれしいですね」

街に開いたホテルとして旅行者だけでなく、地元民が集まる場にしたい
トップバッターはリビタの北島優さん。リビタと言えば、リノベーションを軸に、マンションやオフィス、シェアハウスなどの不動産事業で知られ、古いものを新しい価値に変えてゆく会社。ハードにとどまらず、そこで行われるコンテンツの企画や運営も行い、まさに一気通貫で場づくりを行っています。
その場づくりの事業の一環として新たに注目したのがホテル。北島さんは地元の石川県金沢市を舞台にリノベーションホテル2件、HACHi金沢とKUMU金沢を展開するプロデューサーです。

「僕がリビタで担当しているのは、不動産の企画、空いている不動産を有効活用する事業のプロデュースです。もともとは建築デザインを学び、不動産コンサル会社、フリーランスを経て、現職に至っています。空間づくりからその場で実施されるイベント等のコンテンツまで一貫して関わり、不動産事業としての採算性だけでなく地域の活性化にもつなげていくことをモットーにしています。
HATCHi金沢の話をする前にその発想にいきついたキッカケの話から。2014年からリビタが運営を行っているシェアスペース「BUKATSUDO」の業務です。横浜みなとみらいの造船ドッグの跡地を活用したシェアスペースです。みなとみらいの就業者は10万人程度と言われているんですが、オフィス街での人々の繋がりは希薄です。そこで、仕事の昼休みや仕事終わりに立ち寄れる秘密基地のような”趣味で繋がれる場所”があれば活用されるのでは?と考えて大人の部活動の場をつくろうと思いました。


BUKATSUDOでは、俳句や音楽などいわゆる趣味の講座を行っていますが、変わったところでは、本屋をやりたい人のための講座をブックコーディネーターの内沼晋太郎さんを迎えて実施していて、その場からまさに本屋を始める人がでてきたり。またレコード好きが集まり、レコード部としてイベントを開催したり…きっかけとなる講座をもとに、自然発生的に部活が誕生して、それが自発的に行動をはじめる、そんなループがどんどん起こっています」(北島)
そのように着々とコミュニティが醸成されているわけですが、こうしたシェアスペースは首都圏の人口が多いところならではの事業モデルとも言えます。そこで、こうした場を地方で展開するにはどうしたらよいかと考えた結果、ゆきついたのが<シェアスペース×宿泊施設>という戦略です。
「地方におけるシェアスペース事業は大きな売上を見込める事業ではないので、展開するなら宿泊施設と併せて展開するのが、ひとつの選択肢としてありかなと。宿泊施設の中でもドミトリーを含むホステルという業態は、そもそも客室はコンパクトである代わりに充実した共用スペースがあるものなので、共用スペースを街に開いて様々な地域プレイヤーに使ってもらい、多くの人が集える場所にできたらよいな考えました。宿泊事業を収益の柱として経済性を担保しつつ、コミュニティのための場を実現するようなかたちです。
またミレニアル世代に代表されるように、最近では旅行者もローカルの人との交流を求めたり、その土地ならではの体験を求める人が増えていますので、こうしたコミュニティの場は、地元民だけでなくホテル宿泊者にも喜んでいただける場になるだろうと」(北島)
「HATCHi金沢 / THE SHRE HOTELS」の宿泊者は半分が日本人、半分が欧米や台湾・香港などの外国のツーリストです。共用スペースの使い手(地域プレイヤー)としては、伝統産業の後継者や、街づくりのプレイヤー、生産者さんなどですが、共用部でトークイベントやワークショップ、展示などが行え、屋台やポップアップスペースで物品を売ることもできますので、旅行者にプロモーションできる場所として多くのプレーヤーに重宝してもらっています。イベントの参加者によってSNSの口コミも広がり不思議と認知が早く進みました。ちょうど、北陸新幹線の開業後のタイミングで、金沢に観光客が集中していたこともあり、石川だけでなく福井、富山の人ともスムーズに連携でき、北陸の魅力を発信してゆくベースになりました」(北島)
HATCHi金沢はいつもに賑わっているそう。年間80超ものイベントが開催され、最近ではほとんどが外部持ち込みの企画とのこと。さらに、HATCHi金沢での成功を受け、リビタは同じ金沢で次のホテル「KUMU金沢 / THE SHARE HOTELS」も2017年8月に開業しました。

「KUMUでは、ドミトリー形式でなく全室個室のホテルです。ただHATCHi金沢同様に共用部を広く確保していますので、地元のプレイヤーが様々にイベントを展開できるようになっています。HATCHiが北陸という広域エリアの発信拠点であるのに対して、KUMUは金沢をもっと深堀するコンテンツを展開していこうと思っています。工芸や茶の湯、禅など武家文化を根底に持つ金沢のコンテクストを踏まえた内容です。この秋には工芸に特化した日本で初めてのアートフェアの開催も予定されています」(北島)
清澄白河と越後妻有のダブルローカルを行き来する

「もともと空間をつくる仕事が本業なのですが、空間には人が入って、意味が生まれる、箱だけでは無の状態であるとずっと考えていたんです。そんな問題意識もあって、自分たちで運営もする場を始めようとずっと考えていました」(後藤)
「IDEE時代に、本社のあった青山界隈を中心に街を回遊するスタイルの、当時としてはかなり意欲的なデザインイベントの立ち上げを社員が中心になってゼロからの企画制作を行ないました。その時点では、街そのものをデザインプロジェクトの発信会場にするという状況にわくわくしていましたが、街と有機的な相互作用を意識的につくりだしていく感覚はまだ自分では持てていなかったかもしれないと思います」(池田)
「当時不動産価値が沈滞していた東神田、馬喰町周辺の空き物件を借り主と交渉してアーティストと繋ぎ、そこで展覧会やイベントを同時多発させていくCETに、独立後、ディレクターとして合流しました。イベントとしてのCETは8年間開催されましたが、スクラップ&ビルドではなく、古くからある営みはそのままに新しい世代のカルチャーレイヤーが重なって若手アーティストのアトリエやギャラリーやカフェなどが連鎖的に増殖して、街そのものの景色や機能が変わっていくのを体感できたことは僕らの活動の<始点>になったと感じています」(後藤)

「そして、越後妻有のカフェ&ドミトリー山ノ家に続いていきます。2000年から続く越後妻有の大地の芸術祭の行われる土地です。2011年に3.11の大震災がきっかけとなり、2012年にここにあった空家をgift_で自主プロデュースすることになります。当初は、地元のプロジェクトに参加という形だと思っていたのですが、ふたを開けてみるとそこで事業者としてやって欲しいというものでした。悩んだ末にそのまま続けることを選びました。震災直後に、東京とは別にローカルでオルタナティブな居場所が持てるといいねと話していたことが現実となった形です」(後藤)
「完全移住は考えていなかったので、東京と行き来しながら運営しています。東京の居場所/仕事場も、この越後妻有の居場所/仕事場も、どちらも自分たちの地元、どちらも「ただいま」と帰る場所。それを私たちは「ダブルローカル」と名付けました。この複数の拠点を等価に行き交うライフスタイルの中で身についたのは、複眼の<視点>です。都市と地方、どちらからの視点も持てる、どちらも否定しない。オルタナティブな視点を持つことでそれぞれの良いところが見えてくる。常に新たな発見があります」(池田)
「山ノ家は一軒家の民家をセルフリノベーションして1階をカフェ、2階をドミトリースタイルの宿としての運営していますが、自分たちにとっての日常そのままの言ってみれば東京式の空間やサービスなので、当初は自分たちのような都市圏からの旅行者がメインの客層かと思っていたのですが、カフェといういわゆるサードプレイスが存在しなかったエリアなのでいろんな人がカフェを求めて集うんですね。農作業帰りのお父さんから海外のアーティストまで非常に多種多様な人びとがシェアする場となったのがうれしい驚きでした。都市圏では年代や趣味性等で出没するエリアはどうしてもセグメントされますが、ここでは通常であれば出会うこともなそうな人たちがまったく違う言語でも身振り手振りで楽しそうにコミュニケーションしているんです
そうしたクロスカルチャーな出会いをきっかけに、開業の約半年後に地域の有志の方々といっしょに新しい祭りを起こすことになったんです。宿場町であった当地では、古来「茶もっこ」という旅人を気軽に家に上げてお茶をふるまう風習があったのですが、ひと晩 地元の方々が家開きをして心づくしの手料理や地酒などをふるまって、それらの会場を参加者が巡り歩いて語り合うおもてなしと交流の地域祭りとして再編集して、夏と冬に開催しています。地元の方たちと多様なヨソモノたちが毎回仲良く盛り上がっています。ここでの出会いからさらに新しいプロジェクトが生まれたりもしています。」(池田)
「山ノ家が、僕らの居場所というだけでなく想像以上に地域の交差点的な場として機能したことで、これを東京でもやってみたくなりました。山ノ家開業の3年後に、恵比寿から清澄白河に事務所を移転して、ここでも街に開かれている場として多目的カフェを併設したgift_lab GARAGE LOUNGE&EXHIBITをオープンしました。単なるカフェとしてだけでなく、展覧会、ライブイベントなど様々なイベントが行われたりしながらも、地元の祭礼の際に詰め所として使ってもらうなど、街と呼応するスタイルを継承しています。」(後藤)

「茶もっこのような地方での地域交流の場づくりの経験が、東京のローカルである清澄白河での拠点のあり方にも生きているんです。つい最近立ち上がったばかりですが、地域にあるお店や生活している人がお互いを知る機会としてのイベントをつくろうということで、結果的には60軒あまりの店舗を巻き込んだものとなり、地域コミュニティがより深まりました。」(後藤)
お酒を飲めば地方と盛り上がることができる!?だめにんげん祭りツアー
「お二人は、企業、規模がでかい、僕が個人でやっているのは、規模はまけるので数で勝負しています(笑)これは冗談ですが、発起人であるものや途中から関わったもの、運営を主導しているもの、人に運営をお願いしているもの、さまざまな関わり方をしています。もともとそんなに人と交流するのは得意なタイプではなく、建築事務所時代は、一日中、CADの画面とにらめっこしていたような時期もありました。外に目を向けたのは、同じ時期に参加したCETの活動で、gift_のお二人とはその頃に知り合った仲なんです」(二本栁)

「これらの活動から、お二人と少し毛並みの違う、だめにんげん祭りと世界ふぐ協会を紹介しますね。世界ふぐ協会は、もともと地元の大阪ではたくさん食べられているふぐが東京ではあまり消費されてないことを知ったことがきっかけで、ふぐの魅力を広くみなさんに知ってほしい想いから既に活動を開始していた取り組みに参加しました。というのは建前で、動機は自分がふぐ食べたいだけなんじゃないかと思っています(笑)
だめにんげん祭りは、日本酒がすっごく好きな人たちの集まりです。活動は主に全国の酒蔵へのツアーを開催しています。一見、楽しんでいるだけの取り組みに見えますが、きっかけは結構真面目。3.11の震災をきっかけに東北や地方への支援として、自分たちでできることは何だろう?と考えたときに、“現地の食材や、お酒を購入して消費する”ことなら普段の生活の中で無理なくできる!ところが<起点>です。
最初は東京で食材を購入して食べるイベントを開催し、現在では地域の酒蔵に直接尋ねる有志のバスツアーも実施しています。過去に15回の宿泊・日帰りツアーを行い、のべ300名くらい巻き込んで盛り上がっています。さらにソーシャルメディアでの波及も予想以上で、青森のツアーの際には、青森県庁のご協力も多分にいただいたこともあり、だめにんげん祭りが上陸と、地元紙の取材を受けるという存在になっています」(二本栁)

その活動おいて特にこだわりもっていることがあるそうです。
「参加したことを自慢できるということ。今どきで言うとインスタ映えかもしれませんが、、だめにんげん祭りのアイテムや題字はデザイナーに依頼して制作していますし、愛着が湧く手ぬぐいなどのツールも用意しています。それが参加者同士のコミュニケーションのツールにもなるし、ソーシャルメディアの投稿にも映える。あとはコミュニティをオープンにしているので緩やかに参加して、来れないときも引け目ないような空気づくりも大切だと感じています」(二本栁)

コミュニティは自然とできるもの。ポイントは場をつくり、盛り上げること
長者原 まず、プレゼンを聞いて、コミュニティにおける「共生」をキーワードとして採り上げてみました。いろいろな「共生」があると思うのですが、みなさんはどう考えていますか?
北島 僕は施設をつくる立場ですのでその観点からになりますが、コミュニティとの「共生」を実現するのに、その街にある欲求やストレス、ニーズみたいなものを汲み上げて施設に反映させることが重要だと思っています。新しいプロジェクトの時にまずは地元の人たちとひらすら呑みにいって話を聞いています。その話から街に“足りてないもの”を、場所として実現するんです。そういう場を提供することで、人が集まって利用され、コミュニティと共生するような場が出来上がってきます。
長者原 リビタのビジネスモデルはホテルに集客すること、そこを利用してもらうこと、だと思うのですが、gift_の場合、本業とのバランスを考えてビジネスモデルを持っていたりしますか?
ギフト後藤 僕らは本業がデザイン事務所で、店舗の運営もしていますが、本日紹介している活動は、どちらかというと企業事業という感じではないですね。つまり収支がトントンの世界で実行できる意義のあることを行っている意識です。
ギフト池田 たとえば、前出の茶もっこは、イベント参加を前売りのパスポート制にして最低限の資金は担保して、地元のみなさんが提供してくださった農産物を活用するなど、物々交換と言いますか、いわゆる里山資本主義的にうまく循環させてやっていけています。大切なのは無理をしないこと。資金も労働も自発的に気持ちよくシェアできる範囲内でまわしていく。サスティナブルであるためには必要なことだと思います。
ギフト後藤 空間デザインとカフェや場の運営というダブルワーク、地方と都会のダブルローカル、つまり、ダブルライフ。複数であること、オルタナティブな存在をもつこと自体を自身のセーフティネットとしながら、それぞれの地域の人たちともうまく共生していくことが重要だと考えています。
長者原 少し野暮な質問になっていますが・・・コミュニティづくりを種まきの作業として、その先の収穫はどんなことですか?
北島 そうですね、僕の場合、収益性と社会性の両面を担うので、ひとつには事業が儲かることというのが前提としてありますが(笑)、社会性の面では、「金沢楽しいね、また来るよ」と宿泊者に言ってもらえたり、リピートしてもらえると単純にうれしいです。最近採用したホテルのスタッフもHATCHiに泊まったことがキッカケで、金沢に移住してくれて僕らの仲間として一緒に働いてくれたり。あとはホテルのまわりに連鎖的に面白い店舗ができはじめたりしているのですが、街がプラスの方向に変わっていくというのも一つの収穫ですね。
後藤 例えば、山ノ家のドミトリーはヨソモノが泊まる施設、主に地元の人が使うのはカフェということになってくると、接点がそこまでつくれない。それをミックスするためのインターフェイスとして「祭り」を行う。そこで、宿泊客と地元との交流が生まれるから面白いですね。そうしていろいろなことが繋がってそのエリアが楽しくなるが結果的に収穫を生むのだと思っています。
二本栁 僕の活動で“こうなったらいい”は、最初考えていないですね。自分がまず楽しみたい、それを共有する感覚です。コミュニティって捉え方が難しいですよね。開いていようと閉じていようとコミュニティはコミュニティである。外から見て閉鎖的でも中はゆるいこともあるし、その感覚の違いはいつも感じています。
長者原 そういう意味では、“場作り”がキーワードですか?
後藤 その方が、しっくりくる。ヒト属性でコミュニティを考えると、このヒトはどっちなの?という議論になりがち。それを、”場”と言うとニュートラルに聞こえますよね。
北島 リビタの業務では“コミュニティデザイン”という言葉は使わないようにしています。コミュニティを作りますって上からで偉そうじゃないですか。実際には、自然発生的にできることが多いし。僕らは「場作り」やキッカケづくりをしますが、あとはそこにいる人たち次第かなって思います。
後半は会場からの質問も交えてディスカッションしました。
参加者その1 コミュニティづくりでの失敗はありますか?
二本栁 まず、コミュニティづくりの”失敗ってなんだろう”と思いました。 たとえはじめた取り組みが無くなったとしても、それって失敗というのかなと思っています。
ギフト池田 同じです。私たちの活動も“ねばならぬ”が特にないです。タイミングがあって人があつまればうれしい。ただ、少ないときも天気が悪かったかな〜と気軽に捉えて。人に迷惑かけない限り、そこに素敵な時間の共有があれば十分なのではないかと考えています。それで今は続いているので成功しているんじゃないかな。
二本栁 そう、迷惑かけなければ、出入りも自由。でも相性はあるので、合わないなら参加しなければいいくらいの感覚でいいんじゃないかと思います。
参加者その2 新潟から来ました。実は地方にいる人間は良くも悪くも、コミュニティが作りづらいと感じています。そのため、共感を持たれるための秘訣を教えてください。
北島 僕のように建物を扱う場合、古いビルをリノベーションすることだけでも地方では新鮮に映って共感してもらえているみたいです。こんな建物使えるわけないと思われていたりするので。また古いビルの特徴を活かしたデザインをしているので、近所のおじいさんがふらっと立ち寄って昔の思い出話をしてくれたりします。一方で若い人はおしゃれな場所ができたと喜んでくれたり。地元の人とコンテンツを実施しているので自然と共感であったり人のつながりが生まれているような感じですね。共感のありようは、人によって様々です。
池田 返答と少しそれるかもしれないのですが、私たちにとってはダブルローカルであることかもしれません。先ほどもお話しした複眼の視点を持てること、オルタナティブな視野や価値観を持てることが地元の方々に接する時に生きてきます。
たとえば、棚田の夕暮れの風景がほんとにきれいだねと言うと、いつもそれに見慣れている地元の人たちはきょとんとするんです。どこが?何が?って。
越後妻有の地元の人にとってはあたりまえのことが、実は客観的にとてもすてきなものなんだよと伝えてあげられる。地元をヨソモノの視点から再発見させてあげられる。よくお話しする地元のお父さんが「何だかずっと、どんづまり(※越後妻有の妻有はどんづまりの「つまり」が由来。日本有数の豪雪地帯で冬季は孤立しがちだった。)に生まれてきちゃったと思っていたけど、けっこういいところに生まれたんだなと気づかせてもらったよ。ありがとうな。」と言ってくれたんです。うれしかったですね
ギフト後藤 僕らが考えたのは、大地の芸術祭のようなイベントがないときでも、たんたんとそこに店があることが重要なんじゃないかと。空家だったところに灯りがともともっているのは嬉しい、と言われます。祭りの後の日常的なものが新しくつくられていくことがまだまだ足りていない。僕らがここに居て共感してもらう意味があるとしたらそういうことだと思っています。
参加者その3 実際にコミュニティを運営しています。そこでボランティアスタッフに継続して参加してもらうにはよい方法がありますか?
ギフト後藤 先ほども出てきた「深川ヒトトナリ」では約60店舗を紹介していますが、参加者が回りきらない数なのがミソなんです。開催2日間のなかで地元中心のボランティアに参加してもらい、とても楽しい体験だったけれど店をまだ見たりない、また人に会いたいという思いがイベント後にも続いてあちこちで自然発生的にリピートして会ったりしています。
深川ヒトトナリの様子
二本栁 そう、ボランティアスタッフがリピートすることは重要。でも難しい。CETでは、なんだかよく覚えてはないんですが、いい感じで大人達(ディレクター陣)が適当だったので、ボランティアの情熱がすごく高かった。ボランティアの人たちも、うまく企画に巻き込んでいくことは大事だと思います。
ギフト池田 ボランティアスタッフが自分たちが支えなきゃ成立しないと感じてもらうことで「自分ごと」になっていく。責任感が自発自走していく。それは、茶もっこのような地方のイベントでも、CETやヒトトナリのような東京でのイベントでも同じですね。
二本栁 ボランティアチームのネーミングも大切。パン祭りでは、オープンサンド。十日町の越後妻有のトリエンナーレでは、こへび隊とよばれてますよね。そんないけてる取り組みに参加していることが誇りになるような仕組みや空気を作るのは重要ですね
ギフト後藤 も問題を解決しよう、という意識は持たない方が良いと思います。例えば僕らの場合、地域の過疎を解決するぞ!みたいな気負いはなくて。それどころか、へっぴり腰で雪かきしていると助けてもらったり、隙があるくらいのほうが地元の人と良い関係が持てるという気がします。
長者原 最後に、まとめスライドを準備しましたが、参加者のコミュニティをはじめるための背中を押したい、一言ください。

ギフト後藤 自分が今いる場所をよく見つめる。趣味でもいいんですが、気になることにアンテナを貼る。そこに何か面白いことがあるんではないか?と。そして何かを感じたら考えすぎずに飛び込んでいけばいいです。走りながら考えるほうが自分のものになると思います。
北島 僕の場合、地元金沢を盛り上げたいという動機があり、自分の不動産ノウハウを生かしてできることとしてリノベーションホテルを立ち上げるために動きはじめて、仲間がたくさんできました。自分のやりたいことについて、強い動機とその人がやる必然性みたいなものがあると、仲間が自然と集まります。
二本 とにかく自分が楽む。まずは飛び込んでみて、いろんなところに関わっていく。そこから形にになったことも多いです。ネットやSNSを使っていろんなものを始めやすい時代なので、良いも悪いもも自分で体験するといいんじゃないでしょうか。
3組4名のみなさんの示唆に富む受け答えを聞いて、実際に行動に起こす人が増えることを願い大盛況にてイベントは幕引きとなりました。みなさん、お疲れ様でした!
テキスト/構成 長者原康達(OpenCU)