これからはインターネットと話す方法が多様化する時代
「“キーボードなんて触ったことがない”という人が情報を得ることができる…そんな時代が次のインターネットなのかもしれません」と矢野さん。Androidアプリを制作するようになり、よりいっそう身体的なコンピュータの在り方 “フィジカルコンピューティング” の姿を模索するようになったのだという。
現在、インターネットのあちら側とこちら側を繋いでいるデバイスはキーボードとマウスが主流。Webページ上のインターフェースもマウスポインタで操作するという具合だ。
「この感覚は人間にはマッチしていないのでは?これからもマッチしないのでは?と感じたりします。それをすっ飛ばすことができるのは、スマフォやタブレットになります。つまり、大きな画面で触れるユーザーインタフェースが今後、重要になってくると考えています」
矢野さんが、ユーザーとデバイスの関係を強く意識したのは、父とのある会話だったという。
「父が、“なんでインターネットするのにOSの勉強しなきゃいけなんだ”と聞くんです。また、“ワープロソフトを使うために、ワープロソフトのマニュアルを勉強しなきゃいけいないのはわかるよ。ただOSの解説も読まなきゃならない、これが面倒なんだ”って言うんです。“やりたいことが机に並んでいて、それを押せばやりたいことができる。そんなものはないか?”って。それってタブレットなんですよね。もちろん、彼の世代でもインターネットやパソコンの便利さは理解できるんです。ただ、そういう人たちに便利さを提供できる環境が整っていないんだ!と気付いたわけなんです」
AppleのタブレットiPadが革新的だったのは、人とインターネットの間をタッチパネルで繋いだことだった。そもそもパソコンを机の上の作業に見立てる“デスクトップ”を世界に広めたのもAppleだったが、従来は机に触りに行くのにマウスを介していた。それが直接手で触れるようになり、基本的な作業が限りなく人間の身体動作に近づいた。
「コンピュータと直接会話できる人と、出来ない人が同じ環境にいる現状ががおかしいのかもしれません。開発者はキーボードでコードを書くし、一般的なユーザーはタッチパネルで操作する、というふうに、適材適所でデバイスが分かれてゆくのかなと考えています」と矢野さん。
フィジカルコンピューティングの姿は、例えば、Microsoftが映像化にしているこの動画が表している。