きれいに描くのではなく、情報を上手くレイアウトするのがコツ
さて、紙を用意したところで、次はいよいよ描いていく段階に入る。
「名前がグラフィックファシリテーションと言うからには、絵を描くのかと思われがちですが、文字だけでも問題ありません。どちらかと言うと、絵は分かりやすくするためのオプションだと考えます。さらに当初は発言を書き写すだけで精一杯になります。まずは文字だけでOKです。重要なことや、多くの人が賛成した意見などは太字、サイズも大きく書き、関連事項は小さなサイズで書くなど、フォントとカラーを使い分けましょう。このとき、普段使っているWordの強調表現を上手く活かすと分かりやすいです。つまり、最も重要なことは赤の太字、参照事項は青の斜体を、地の文は黒の細字でという表現ですね。こうすることで、共通理解のあるフォントの使い方が可能になります。私も実践しています」
まとめの手法としてリストが基本中の基本
グラフィックファシリテーションで何よりも画期的なのはそのレイアウト。ぱっと見て一目瞭然、そしてそれが新しいアイデアを生み出す創造性を備えていることが必要とされる。
「基本的なレイアウトパターンが7つあります。グラフィックファシリテーターは状況に応じてそれらを使い分け、最適なレイアウトを構築していきます。そう聞くと大変ですが、まずは“リスト”パターンだけを覚えれば大丈夫です。いわゆる箇条書きですね。関連するキーワード・発言を束ねて、左から右に行くにつれて結論に導いていく。いちばん汎用性があるレイアウトです。これを最初に極めるのが、いわゆる料理人の包丁さばきの練習みたいなものなのです」
以下がリストのレイアウトパターン。上位概念と下位概念が整理され、左から右へと展開していくのがポイントだ。
できるだけ、早く発言を書き取り誰でも分かるように簡略化する
「最初は“リスト”で、できるだけ早く発言を書き取ることに徹底します。そして、みんなが分かるように整理しようと自分なりに心がけてみるといいでしょう。そうして少しずつ、しっかり全ての人が言っていることを理解し、誰にでも分かるようなきれいな言葉で簡略化し、自分の解釈は入れずに概要を書く能力を身につけることができれば、それは立派なグラフィックファシリテーションです。それができれば、場の人たちがグラフィックの力を使って創造性を発揮したり、議論をゴールに導いてゆく“追い風”を感じられるようになるでしょう。そうそう、まずみんなの前でやるのが恥ずかしければ、自分のノートから始めてみるのもいい練習になります」
グラフィックファシリテーションは、全ての発想・アイデアをまとめるメソッドに応用できる。井口さんは小さなミーティングなら、ノートでまとめ上げ、終わればメンバーはそのノートをスマートフォンで撮影して持ち帰るという。