「ど―もくん」「こまねこ」「ダンボー」などの動画を制作する株式会社ティー・ワイ・オー ドワーフ事業部のプロデューサー村山哲也さんと、株式会社ベネッセコーポレーションこどもちゃれんじほっぷ編集の佐藤桃子さんをモデレーターに招き、去る2014年2月28日、3月15日の2日間に渡り開催された、ドワーフ×こどもちゃれんじ共催OpenCU「ストップモーション」ワークショップ。身近なモノの面白さ不思議さを子どもに伝えよう!をテーマにチームに分かれ、ストップモーション動画を制作しました。ここではその様子を一部紹介します。
ワークショップの流れは、以下。制作も含め短い時間でいっきに制作するスケジュールとなりました。
・ドワーフ制作事例と動画制作のためのヒント(ドワーフ村山さん)
・こども向け映像のコツ(ベネッセ佐藤さん)
・チーム分け
・チームで制作する映像コンセプト作成
・役割分担
・制作計画をチーム発表
◯DAY2 3/15 13:00-17:00
・チームで映像制作
・チーム発表
・講評
手法にとらわれ過ぎない
設計図をしっかり作ろう(村山)
開催の挨拶のあと、村山さんのレクチャーからイベントはスタート。「コマ撮りとは?」などの基本をレクチャーいただきました。村山さんは自身の経験や事例からストップモーションの魅力とその制作過程の実状を共有。事例の中には、『毛糸でモチーフを覆ったものをほどきながら作った』『2000枚におよぶ紙をカットして1つの長編ムービーを作った』…など裏話も満載。会場は終始感心するばかりでした。
“コマ撮りの良さは?”というスライドでは、“温かさなど普遍的な良さ(手法や技術は進歩しても)”と魅力を語っていました。
村山さんがストップモーション制作に向けて、参加者に送ったメッセージは2つ。
・「コマ撮り=人形」のような既成概念にとわらない
・設計図(コンテ、シナリオ)を用意する
あとは、しっかり1コマずつ撮っていきましょうと、エールを送っていただきました。
子供向けの動画はテーマをシンプルに
「知っていることがほとんど、知らないことを少し」表現する(佐藤)
続いて、村山さんと「しまじろうの動画」制作でコラボを行っている、こどもちゃれんじ編集部の佐藤さんからテーマの発表がありました。
テーマは「コマ撮りで子どもに身近なモノの面白さを伝える映像を作ろう!」
続いて、DVD教材など多くの動画も制作している経験から、こども向けの映像づくりのポイントをご紹介いただきました。その1つが、
×何かを教える
◯何かをやってみたいと思わせる
例えば…しゃぼん玉の杉山兄弟がひたすらしゃぼん玉を作る、着ぐるみキャラクターが野菜堀りをしたり、する映像。まずはやっていることを見せることが重要とのこと。併せて映像作品『こんなかじげきじょう』を上映。ブロッコリーを細かく刻んでもブロッコーリーの形を保っている様子の動画を紹介しました。そこでのポイントはとても示唆的でした。
◯おとながほんとうに面白いと思うことを伝える
→大人が面白いと思えるものじゃないとこどもにはばれてしまう
◯テーマは1つ。本質をほりさげて1つにしぼる
→こどもの集中力は2-3分しか続かない
◯知っていることがほとんど知らないことをちょこっと
→こどもはあまりに知らないことには興味がない
子供向けに企画を考えていると、身近なもののにも大人には当たり前だけど、こどもは感心するもの。そのような意図でテーマを設定しました。動画に限らず「こども向けコンテンツ作り」のTIPSにあふれた内容でした。
このあと、会場ではチームに分かれ、ポストイットを使ってアイデアをシェア。こどもが楽しめるアイデアってなんだろう?チーム毎にさまざまなアイデアが飛び交いました。
お風呂が温まる仕組み、ホウキでゴミが集まる動き、望遠鏡の仕組みに、色の構造、いろいろなアイデアが飛び交いました。そして各チームのアイデアの“もと”が決定。続いて、どうやってコマ撮りをするのかの作戦会議が始まりました。そんなこんなでワークショップ1日目は終了しました。
チームごとに手法や進め方ばらばら
ユニークな表現のオンパレードに
動画制作の時間は2日目がメイン。チームで集まって制作するのは3時間設定されていましたが、前回との間に既に仕込みを行ったチーム、素材の準備進めたチームとさまざまな状態でスタートが切ることに。
と、ここで今回のワークショップで使用した機材をご紹介
・iPhone(iPod touch)+動画制作アプリ(ストップモーションスタジオ)
・スマフォホルダー付き三脚

今回使用したのはフリーiOSアプリ「ストップモーションスタジオ(開発: CATEATER, LLC)」5〜30秒の自動インターバル撮影が可能なカメラ、画像の並び順編集、音声挿入など基本的な操作が可能。
以上!?
カメラの画質、多様な編集機能など、機材によって出来が違ますが、今回は“設定されたテーマを伝える”ことが目的。村山さんも「メッセージと目的がしっかりしていれば、映像の出来はそんなに気にならないですよ」とアドバイスしていただき、限られた環境中(どのチームも同じ条件)で制作を行いました。
各チーム、コマ撮りに必要なモノを準備してコマ撮りがスタート。万全の準備をしているグループ、もう事前に作ってきているグループ、その場で即興でコマを考えるグループ、それぞれのチームがそれぞれのアイデアでコマ撮りを行います。事前に支給された三脚やiPod touchだけではなく、それぞれ工夫を凝らしてコマ撮りをしている姿に村山さんも興味津々。3時間の制作時間もあっとゆう間に過ぎていきました。
出来上がった動画を試写
チームごとに手法や見せ方も多彩
最後はそれぞれの作品の発表です。手法も面白さも各チームとても特色があって、面白い作品が出来上がりました。2日目で特に興味深かったのが、各チーム、作っているときはまるでこどものように没頭して作っている姿でした。扱っている素材はこども向けでかなり可愛い物ばかりで、さながら「子どものために大人が真剣」という気迫。それぞれのチームの作品が面白く、こどももやりたくなるだろうなと感じた1つの要因がここにあるのかなと思います。
ここからは実際の作品と村山さんの講評をお届けします。
◯チーム「たま」
おたまじゃくしの成長をコミカルな動きで表現。最後は集まってにぎやかに合唱
村山さんのコメント「全体的に1つ1つのカットの計算の絵作りがよかったですね。動きの強弱も面白い。おたまじゃくしはちょっとずつ動かし、他はおおざっぱに。その分、主役のおたまじゃくしが立ってくるような演出がうまく出てました」
◯チーム「ロケット」
ペンをロケットに見立てて、変化してゆく様子を一連のムービーに。最後は、無音で幻想的な世界観を演出
村山さんのコメント「表現のクオリティがすごいですね。立体の表現を使っているのでどんなことが起こるか期待が高まりました。いろいろな表現をチャンレンジしつつ、楽しくやってくれてたのがいいですね」
◯チーム「はみがき」
チームメンバーの娘さんが出演する実写とクラフトの合せ技。はみがきの楽しさを表現
村山さんのコメント「実写を混ぜるのは面白かったです。あとクラフトの表現で水が上下して“口をゆすぐ”ところがいいですね。歯磨きが面白い!とお子さんに伝わる感じがしました」
◯チーム「ごはん」
ご飯を炊く様子を実際のお米を使いながら解説。炎や湯気、タイトルをクラフトで織り交ぜて味付け
村山さんのコメント「出だしの米が動くところ、プロっぽいですね。このような表現は、Googleの広告映像などでもいっぱいあってそれに近いですよ。入口でつかみがあると、そのあと“もっと見てみたい!”感じが出て期待があがりますね。このチームは進行表(設計図)をしっかり準備して撮影は淡々という進行とチームワークも素晴らしかったです」
◯チーム「葉っぱ隊」
素材は公園で拾ってきた小枝や木の実や葉っぱとどこでもある。表情の変化するキャラクターがなんとも愛らしい
村山さんのコメント「私の表現を使うと“アニメーターが素晴らしい”。キャラクターのどこを動かすかのセンスがいいですね。結果、くしゃみの表現もか分かりやすいし、背景の猫じゃらしもいい感じに動く。アニメの良さが伝わってくる作品でした」
最後に村山さんからの総括。「イベントに参加している時点で映像に興味を持っている人が多いのか、各チームのセンスや表現が素晴らしい。さらにそれを楽しくやっている雰因気も伝わってきて、仕事でついつい忘れがちな“楽しむこと”を思い出させてもらいました。これをきっかけに一人でも作ってみてほしいですね。最近では、個人でやってYouTubeにアップしたりすることも珍しくないですから、いろいろ試してコマ撮りが面白いことを伝えて盛り上げてください」とコメントをいただきました。
結果、短い時間と限られた環境ながら、それとは関係ない「動画を作る楽しさ」を体験してもらえました。OpenCUのテーマ「とりあえず集まってやってみる」「普段やらなことにチャレンジ」「クリエイティブの因数分解」とも合致する、素敵な機会になったワークショップでした。

1日目 2014年2月28日(金)19:00-21:00
2日目 2014年3月15日(土)13:00-17:00
◎会場
loftwork lab 10F(渋谷区・道玄坂)
https://loftwork.jp/profile/access.aspx作って、動かして、盛り上がるワークショップ少しずつ動かして撮影した静止画を重ねて独自の動きを付ける手法“ストップモーション”。最近では、CM、ミュージックPVやテレビ番組のオープニング映像などでもよく見かけます。さらに、YouTubeにアマチュアクリエイターが自作映像をアップし多くのアクセスを稼いだり、スマフォの動画アプリで作成し投稿するのが流行ったりと、注目を浴びています。ストップモーションは、大人向けだけでなく、子ども向けの映像でもよく使われています。物が動く面白さは、年齢を問わず楽しめるのが魅力。OpenCUでは、「ストップモーションを作りたい!」という想いでワークショップを開催します。「とりあえずやってみる!」をモットーにクリエイティブな学びを実践する場として、ストップモーション映像を皆さんと実際に作ってみます。イベントにご協力いただくのは、ストップモーションアニメのヒットメーカー、どーもくんやこまねこを制作するプロダクションドワーフと、しまじろうでおなじみ、幼児向け教材<こどもちゃれんじ>編集部。