こんにちは、ロフトワークディレクターの北島です。大盛況だったグラフィックファシリテーション・ワークショップ第1回(前回レポート)では、グラフィックファシリテーションの基礎と、ブレーンストーミングでの活用をワークショップを通じて体験してきました。
今回は、2012年11月3日(土)に行われたグラフィックファシリテーションワークショップvol.2「場」のストーリーを可視化する方法、当日の様子のフォトレポートをお送りします!
グラフィック・レコーディングとグラフィック・ファシリテーション、何が違う?
第二回ワークショップの内容
・グラフィックファシリテーションとグラフィックレコーディングの説明
・グラフィックファシリテーションの道具の使い方
・場のストーリーをグラフィックレコーディング ー基礎、練習、演習ー
グラフィックファシリテーション/ファシリテーター(以下GF)は、文字通り議論を促進させ、場を切り盛りするファシリテーションの役割を果たします。
それに対してグラフィックレコーディング/レコーダー(以下、GR)は、ファシリテーションを行わず、議論の流れや細かいやり取りのビジュアリゼーションを専任で行います。会議を引っ張る役割をファシリテーターに渡すので、情報量の多いMTGの場合や、カンファレンス等の全体の流れをまとめるときなどに採用されるそうです。
初回と今回は、より「聴くこと」と「ビジュアリゼーション」に力を入れて練習してもらうため、GRを使ってワークを行っています。
道具の使い方のレクチャーは、前回参加者と共に復習
ストーリーを可視化するとは?
基本をおさえたところで、今回のメイン・テーマである「場」のストーリーの可視化についてのレクチャー。時間軸のあるミーティングや議論を、どうやってストーリーとしてグラフィックにまとめるべきか?実例を踏まえながら解説が入りました。
では、どんな時に必要になるのか?
・ゲストスピーカーが「物語(自分の経験談、過去や未来の話)」を話すとき
・会社や事業の計画など、「時間」「履歴」「歴史」などの概念の入るMTG
何をポイントに書いて行くのか?
・時間/年/時代などのターム
・キーワード(人物名、ライフイベント、固有名詞)
・物事の進む順番、関係性
どうやって書くのか?
・時間の流れを左→右に書いていくのが一般的
・物語の主人公(場合によっては観客)がどういう気持でそのイベントを経たのか
GF/GRの特色として、通常の議事録では表現できない、「チームの思い」「その場の盛り上がり」「参加者の感情」を図に取り入れて行けることがあげられます。ストーリーを表現するときに、その物語のポイントを示すことで、全体がまとまりを持ち、起承転結がよりわかりやすくなります。
本場のグラフィックレコーディング
それでは早速実践!…の前に、百聞は一見にしかず、スライドで本場のGRを参考に見てみることに。
井口さんも在籍されていた元Groveのグラフィックファシリテーターの方で、
ご自身の仕事のジャーニーマップを描かれています。(音声も、ご自身の声)
は、早い!そして、わかりやすく、美しい…
時間軸とと並行して、ターニングポイントとなるイベント+感情のラインが描かれていることが分かります。
気を取られがちになってしまう、色やイラストの仕上げは、最後に入れているんですね。
それでは、実践!
後半は早速ワークに入ります。お題は“わたしの一週間”。
・今週一週間にあったことをはじめにノートに書き出す
・3人一組になり、語り手の話す一週間のストーリーを書き手がGR
前回参加された皆さん、ぐぐっと上達されていました!
リスト、クラスターを取り入れながら、「流れ」と「感情」の表現をどうするか、みんな工夫をこらします。
日本中かけまわった人の一週間では、日本地図がかかれていたり、
1週間で出会ったった女性の情報をまとめたGRも!?(写真は伏せます…)今回は全体で3サーキット、1サーキット毎に井口さんからのアドバイスが入ります。基本的な「丁寧に描く」「まとめ方」の指摘の他にも、ストーリーをGRする場合に必要な指摘もいくつか出ました。
井口さんのアドバイス・ダイジェスト
・画面全体を大きく使おう
少し離れたところからみる人にも見やすく、細かい話題が入った時も対応できます。
・GRの時間配分を考えよう
書取り、ポイントや流れをつける、グラフィックを描く&装飾の時間配分をして、GRを完成させるようにしましょう。
・迷った時は、とにかく書く
ポイントが分からない、難しい場合も、とにかく手を動かして書く!
・絵と字のバランスは?
絵を沢山入れるのもよいことだけど、「見る人、共有したい人」ありきのGR。
後から思い出す時、その場で話した事を言語化して、まずは書きとめ、時間が余ったところで、絵をいれましょう。
「ファシリテーション」を置いた「レコーディング」では、議論に参加をしない分、文字を書くのが追いつかなくなる場面もありました。物語のポイントを見極めて、編集し、大きな流れでそれぞれの要素をつなげる。そのすべての判断は、聴きとった言葉、話し方から得られるように思いました。「書く力」が、実は「聴く力」と直結していることに気付かされる3時間でした。
番外編
ワークショップ後に参加者のみなさんとカレー屋さんにランチに。そこで、井口さんの「コミュニケーションプロセスデザイナー」のお仕事について、興味深いお話が出たので、紹介します。井口さん、グラフィック・ファシリテーションのプロであるのはもちろん、グラフィックを用いないファシリテーションもされています。
Q. ファシリテーションするMTGが時間通りに終わらないし、みんな好きな話をしちゃう…。MTGを生産的にするための、何かコツはありますか?
A. はじめのうちは、アジェンダを分刻みにします。伸びたときはアジェンダを都度組み直します。そうして、時間の感覚をまずは自分で養うことが大切です。話が横道にそれてしまうときは、ある程度は好きに話してもらいます。(ファシリテーションは、コントロールでは無いから)その上で、横道の方向が「本当に大切な事なのか?」をチームのメンバー(あるいはクライアント)に聞きながら進めます。フィードバックによっては、当初予定していたアジェンダとはまったく違うテーマに切り替える方が適切だと判断することがあります。あるいは、別の場でその話をする機会を持つことにしてアジェンダに戻るなど、臨機応変にMTGを進行します。
コントロールするのではなく(もちろん、目標地点に導いてあげたり、話をまとめたりすることが必要な場合もありますが)、よりよい方向に話を進めるための、ファシリテーター。グラフィック・ファシリテーションをしていると、話を聴く力がより身につき、通常のファシリテーション時にも「全体を見る」、「ポイントを見極める」、「誰が何を話しているか」、を上手く感じとれるそうです。
次回11月24日(土)は、グラフィックファシリテーション講座も、最終回。レコーディングだけでなく、ファシリテーションの演習を取り入れ、「聴くこと」「書くこと」「ファシリテーション」をどのように両立していくか?の方法を学びます。
みなさん、楽しみにお待ちください。