さる6月29日、OpenCUと loftwork.comの共催で「インフォグラフィックス」をテーマにしたトーク&ワークショップが行われました。「インフォグラフィックス」とは、複雑なデータや情報を、より楽しくわかりやすく伝えるためグラフィックスのこと。インターネットを中心に注目度がじわじわと上昇中の分野だけに、会場には40名を超える参加者たちが集まりました。
前半のトーク・パートと、後半のワークショップ・パートで構成される今回のイベント。人々が集まり、学び、考え、手を動かした白熱の2時間。「インフォグラフィックス」をめぐるトーク&ワークショップの様子をお伝えします!
[文 ・ 吉原 徹 (sagres)]
ミッションは、可視化。存在するけれど見えないもの、を見せる
さて、前半のトークでは「TRIPGRAPHICS」などのインフォグラフィックスを手がけるグラフィックデザイナーの徳間貴志氏(bowlgraphics)が登場。1950年~2050年の日本の人口推移をインタラクティブなインフォグラフィックスに落とし込んだ作品が「ツタグラ賞」を受賞するなど、まさにシーンの最前線で活躍しています。(「ツタグラ賞」受賞時のインタビューはこちら
トークの聞き役は、日本のインタラクティブ・クリエイティブの先駆者、777Interactive代表・福田敏也氏! 豪華な面子です…
徳間氏は、インフォグラフィックスの役割をプリズムに例え、「たしかに存在するけれど、見えないもの。それを見せることがインフォグラフィックスの役割です」と言います。
「光」という、目には見えないものを可視化するプリズム
たとえば、下図のように一列に並べられた人間のイラストからは、それぞれの関係性は見えません。けれど、いくつかの線を引き、配置を換えるだけで、たちまち家族関係がくっきりと浮かび上がります。実例を交えながら講義を進める徳間氏のコトバに、場内はさっそく引き込まれます。周囲をぐるりと見渡せば、熱心にメモを取る人もちらほらと。
この状態だと、人々の関係性はわかりませんが…
樹形図で6人の関係性が可視化されました
可視化した情報に直感的な“遊び心”をプラス
情報の可視化に加えて「面白い」、「楽しい」といった直感に訴えかける要素=プレゼンテーション的な遊び心も大切だと徳間氏。理由は「読み手を引き込む遊びの部分があれば、伝えたいデータや情報をじっくり読み込んでもらえる」から。そのためには、グラフィック的な工夫や、興味を引くようなデータの切り口などが求められるのだと、徳間氏は続けます。 たとえば、下の図はすべて「各国のタクシーが1000円で行ける距離」を比較したもの。
「棒グラフでもデータの可視化は十分されているけれど、カーレースに見立てることで、より興味を持ってもらえるはず」と徳間氏。実例を挙げながらひとつひとつ解説する徳間氏の話に、思わずうなずく参加者たち。場内の空気は次第に熱を帯びていきます。
インフォグラフィックスをつくるための具体的なコツ
インフォグラフィックスの基本的な役割を開設した後は、より具体的なテクニックに踏み込んだ内容になりました。徳間氏が最初に挙げたキーワードが「〈記号〉と〈既知〉」でした。「たとえば、『738万8790㎥』と言われてもピンと来ないけれど、『東京ドーム6杯分』と言われればなんとなく想像はつきますよね」。
さらに、情報をプライオリティごとにレイヤー化し、伝えたい情報を際立たせること。その時に色でコントラストを付けるとより焦点が明確になること……など、インフォグラフィックスをつくるためのtipsが次々と披露されていきます。 直感的に「伝わる」インフォグラフィックスをつくるためには、理論的に計算された表現で「伝える」ことが大切! 徳間氏のお話は、そんなことを気づかせてくれます。
等高線のような図。レベルごとに濃淡をつけることで、どの部位が重要なのかがみえてくる。
特に目てほしい箇所を、色で際立たせることもできる。 徳間さんいわく、「僕らは数字などのローデータ(生のデータ)からインフォグラフィックスをつくるけれど、読み手にとってはインフォグラフィックスそのものがローデータになります。だからフラットな視点を確保しつつ、受け手が自由に解釈できる余地を残すことも大切」とのこと。
「伝えたいこと」を意識するあまり、恣意的な表現になってしまうと、じっくり情報を読み込むというインフォグラフィックならではの楽しみが失われてしまうのかもしれません。 「見えないものを可視化することを念頭に置きながら、ざっと読み飛ばされないための引っかかりや楽しさ、面白さをひとつ入口に置いておく。さらにみんなが自由に解釈できるような出口をつくる」これができていれば、1枚のインフォグラフィックスとしては上出来だと、徳間氏は前半のトーク・パートを締めくくりました。