制限時間が終了後は、それぞれのインフォグラフィックスをチーム内で順番にプレゼンしていくのですが、これがかなり面白い! グラフィカルなインパクトを重視した作品からデータの切り口にこだわった作品まで、荒削りなラフデザインながら「そうきますか!」という新鮮な発見の連続なのです。
一方、発表する側は自分の「伝えたい」ことがきちんと「伝わる」のかハラハラしつつ、それぞれの作品をあらためて客観的に俯瞰できている様子。いつしか、チーム内では「その見せ方面白い!」「こっちのデータと組み合わせてみるのもあり?」なんて素直な意見も飛び交うようになっていました。
さらに各チームで代表作品を選んだ後は、いよいよ全体プレゼン時間。いずれも代表作品だけに、各国の「親日度」を世界地図に落とし込んだものや「行ってみたい旅行先」の男女差に焦点を当てたもの、「旅行者の年齢層」の分布を飛行機の形で表したものなど、力作揃いです。
各プレゼンテーションの後には、徳間氏のほか、クリエイティブディレクターの福田敏也氏(777Interactive)、土谷貞雄氏(くらしの良品研究所)、林千晶(ロフトワーク)が講評を加えられていきます。各作品のユニークなコンセプトや視覚表現のアイデアは「どっちが試されているか分からない(笑)」と土谷氏が唸るほど。さらに「『出会いを求めるなら、男性は西へ。女性は東へ。という発想は、欲望に直結しているところが直感的で良いと思いました(笑)」(福田氏)、「移動時間を比較する作品について私がコメントしたいのは、金曜夜発のパリ便が一番効率よく旅行できるということ(笑)」(林千晶)といったコメントも続々と飛び出し、会場は一層盛り上がりを見せます。
ひとつのインフォグラフィックスに対して、情報の受け手がさまざまな視点で考え、語りたくなること。これもインフォグラフィックスが「つたわっている」ことの証明なのかもしれません
数々の講評のなかで、特に具体的だったのが、やはり徳間氏の意見でした。「沖縄と北海道の対決にしたら、もっと読み手の興味を引けるはず」「単純に所要時間を比較するよりも、24時間でどこまで行けるのかなど、逆に時間を設定するのも効果的かも」など、データの切り口や視覚表現をより面白そうな方向に転がしていくその手つきの鮮やかさは、インフォグラフィックスの第一線で活躍するデザイナーならでは。実際にインフォグラフィックスづくりに挑戦した直後だけに、プロの“凄み”を目の当たりにした場内からは、思わずため息がもれていました。