CMSを活用したコンテンツのエコシステムを
2000年の後半あたりから、清水氏の情報への意識は、CMSへ(コンテンツ・マネージメント・システム)と移っていった。一方、最近になって企業や個人がこぞって採り入れているCMSだが、導入理由は“面倒なサイト更新を楽にできる”という点にとどまっている。しかし清水氏は、”コンテンツを蓄積し、いかに戦略的に使うか”という意識で向かってきた。その理由とは何なのだろうか?
「ものづくりをしている人の評価をする仕組みを見直したかったのです。コンテンツを作って様々な貢献をしているのに、給料や社会的地位が低かったり、彼らが世間的に正しい評価を受けていないことがとても悔しかったんです。どうしてそうしたことが起こるのかを考えてみると、作られたものが一瞬の話題になるだけで消えていく、“使い捨て”になっている部分が多いという事実に気づいたのです」
消えていったコンテンツの中には質は高いが、時流と合わなかったものもあるだろう。そうしたものが、必要なときに必要なだけ流通する環境が、発信側にも、受信側にも理想的と言える。
「いいものを作って貯めた人が、ちゃんとそれに見合う名声や対価を手にすることが可能になることが一番健全です。たとえば500本の映画のレビューを書いているブロガーさんがいるとします。その記事がWebページとしてばらばらに存在すると、情報の海に埋もれてしまう。でも、きちんとリンクが貼られてタグがつけられ構造化されていれば、それはWeb上で絶えず循環して利用される”有益なもの”になります。この循環を実践するためにCMSを研究したり、サイトのアクセス分析を行っている意識が常にあります」
メディアの構造などが、もう少し改革されれば、現場の更新ツールとしての利用にとどまらず、コンテンツの社会的有効利用がCMSで模索され始めるだろう。現在、ソーシャルネットワークを通し、社会と情報を個人レベルで多くの人が意識し始めている。加えて、チープ革命以降、値段がつけられなかったコンテンツが電子書籍で見直される機会も得ている。実際に手を動かしている人が本当の意味で評価されてゆく社会の実現は、それほど遠くはないのかもしれない。
次回は清水氏のキャリアの中核となる、アクセス解析のきっかけである楽天でのサイト運営、さらに有力な大企業を渡り歩くキャリアパスについて語っていただいた。