取材・構成
Webの技術が高度となり、ユーザーがブラウザを通じて得る“サイト体験の深み”も増している。“ユーザーエクスペリエンス”という言葉が一般的になってきた昨今、サイト上で適切なユーザー体験を実現するためには、サイト管理者、プロデュサー、Webディレクターは綿密に設計を行ない、さらにデザイナー、マークアップエンジニアの領域まで、各レベルでのコミュニケーション・デザインが重要となっている。そのユーザーエクスペリエンスの領域で注目を浴びているのが、株式会社ツルカメの森田雄氏。Webサイト設計への氏の配慮は、そのまま仕事へのポリシーとも通ずるものだ。全3回にてご紹介するのは森田氏のこだわりの歴史。第1回は、森田氏がウェブ業界に到達するまでのストーリーだ。(Webエキスパートより転載)
ゲームクリエイターを夢見た青春から一転…
森田雄氏、35歳。アックゼロヨン・アワード グランプリおよび内閣総理大臣賞、グッドデザイン賞など、そうそうたる受賞歴を持つ。世界からも注目されるWeb制作会社ビジネス・アーキテクツの創設にも関わり、Web業界の最前線を走り続ける森田氏であるが、Web業界を志した経緯はどのようなものだったのだろう。
「学生の頃、富士通のFM TOWNSのゲームが好きでした。ゲームクリエイターを目指してゲームの専門学校に進んだのですが、入学してまもなく富士通がFM TOWNSを終了してしまったんです。FM TOWNS以外のゲーム開発に携わっても良かったんですが、落胆が大きかった。その時に、ゲームは、検証やらテストやら完成前にプレイし倒して飽きてしまうのではないか?とも考えるようになって、自分は他人が作ったゲームをプレイして、ああだこうだ言っている方が楽しいかなと考えたんです」
ゲーム業界への就職をあきらめた森田氏は、パソコン周辺機器メーカーにインターンで入社。Windows95マシン用の外付けドライブや、ビデオCDの販売業務をしていた。しばらくして「そろそろうちの会社も、ホームページを始めよう」ということになり制作を任されることになった。
「最初に手掛けたWebサイトですね。その頃は、毎日、ビデオCDのパッケージをスキャンしてはサイトにアップするような作業をしていました」
図らずも、Webサイトの仕事と出会ったわけだ。HTMLを独学し、サイトをコツコツと充実させる毎日。CSSの存在なども初めて知り、森田氏は持ち前の好奇心を発揮し、緻密にコーディングを行っていた。
そんな折、氏は職場で『東芝EMI』と書かれた段ボール箱を発見する。