ネットの世界に思い込みは禁物。子供の推理すら、時には武器になる
清水氏は10歳の子供の父親でもある。そのリアルなデジタルネイティブ・ライフを綴る「こどもIA日記」が彼のブログ上でも人気だ。彼自身、子供たちの柔軟な発想に驚き、自らの発想に役立てていることも少なくないという。
たとえば、愛用するGoogleの検索結果(つまりSEO)についてこんな意見を出すそうです。
「たとえば、ネットゲームはいろんなところで“無料”と言ってる。でも、題名にももっと魅力をださないと。一番大事なところを題に入れる。探しているものを具体的に伝えないとがっくりする。それにうまい話には裏がある。いいことばかりだとあやしい。でも短所ばっかりでもだめ。短所は最大で20%ぐらい入れるべき」
もちろん、突然このような発言が出てくるわけではなく、清水氏によって誘導尋問されているわけだが、答えにバイアスをかけたり、ヒントを与えているのではない、という。
「先の例は、コンテンツの文章にいろいろなキーワードを詰め込むと、SERPのサマリーが分かりにくくなるので、検索結果での表示を想定して意味が伝わるように書くべき、という意味のようです。キーワード密度やMeta Description云々という知識を超えて、なかなか核心をついています。検索エンジンの仕組みや歴史を知らなくても、ユーザー視点で考えれば子どもでも分かる。SEOってシンプルな話なのかも? と考えさせられますね」
子供というのは、前提となる知識が少ない分、私たちが捨てるのに大変苦労を要する“思い込み”がない。また、清水氏の行動原理にも、そうした思い込みを一気に捨てている感覚がある。
「開拓・推進のプロジェクトをリードする時は、あまり上に報告しないようにしています。いろいろ伝えたり相談してしまうと、自分がコントロールできないところで合意形成や意思決定がされてしまいます。何かを開拓しているときは、自分が誰よりも一番詳しい状態なのです。自分が一番知っているということは、最速で最高の意思決定ができるのも自分だということです。
半ば強引に割り切ったような進め方しないと、新しいことは進んでいかない。日本では“ほうれんそう”なんて言います。報告・連絡・相談が物事を進める上で大切だということです。ルーチン業務には良いかもしれませんが、時には破った方が良いこともあるんですよ」
清水氏の仕事ぶりは、まさに人生の総合芸術と例えることができそうだ。いろんなことをいろんな角度から見て、捨てるところは捨て、役に立てる部分は10歳の子供からでも吸収する。そうした柔軟性と応用性によって、彼のユニークなキャリアとスキルは、常に高められているのだった。