伝えるために働く、という発信型の仕事で、新しい働き方を伝えたい
先ほどのビジネスドリブンを可能にするアクセス解析によって清水氏は、外部の技術者ながらもビジネス成果に関われるという、特殊なスタンスに立つことを可能にしている。
「実際はフリーのコンサルタントであり、数年単位のプロジェクトを請け負っているわけですが、表向きは正社員として組織の中に入っていますよ。日本ではフリーだと権限がもらえず、コミットも中途半端になるので、開拓や推進ができません。プロジェクトには、終わりがあるもの。入社後数か月で、辞めるための条件を決めます。これを絶対に達成するぞ、終わらないと辞められない、といつも背水の陣です」
楽天の他にも、本特集の第一回に登場した地ビールの会社「サンクトガーレン」では、社外CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に就任している。部外者としての無責任なアドバイスではなく、“中の人”になり、ビジネス成果にコミットしているのだ。就職すると、自分は会社というハードウェアの一部になる。そうではなくて、有効なソフトソフトウェアとして、偏在して機能すること。たとえば自分が、ハードウェアのメンテナンスをするような唯一無二のソフトウェアになれば、社外からでもその会社のビジネスのコアな部分にリーチすることができるのだ。
「とはいえ、私が最終的に到達したいところは教育です。こうした働き方をいろんな人にノウハウとして提供したいと思っています。自分の中に貯めておくだけでなくて、セミナーや執筆、ウェブサイトに公開していくと、どんどん広がって考えも深まる。それに、常に自分の考えを外に出しておけば、何か間違ったことをしていたときも、指摘してもらえますから。ですので、大学などの教育機関で閉じるのもあまり好きではありません。ビジネスの現場で常に開拓と実践を繰り返しつつ、それを若いひとに伝える、というのを両輪でやりたいですね」と清水氏。
ゆくゆくは、教育としてノウハウを伝える側に自分の主軸を置き、それを伝えるためにはどういう実験が必要か、という視点で会社・プロジェクトを探していくという働き方を模索・提案していきたいという。
「日本人は真面目に仕事をがんばりすぎだと思いますね。日々の業務で疲労したり、文句をつぶやくだけで終わったり…無駄なことなら無駄と主張し、それが通らないような組織なら辞めてしまえば良いんです。現場ががんばりすぎて吸収するから、マネジメント側が甘えるのです。
良い人材を探して確保するのは大変だ、社員の力を発揮させるために環境やリソースを確保しないとビジネスが継続できない、とお互いが認識する必要があります。ただし、自分の価値を自覚して高め、結果を出せるようになっておくことが前提です。それをゴールとして、若いうちにがむしゃらに頑張るのは必要。いや、効率よくスマートに、でしたね。訂正」と清水氏。