実践者であり続ける。 Webアナリスト清水誠氏インタビュー

shimizu_pjoto

13.Apr.2010

効果測定に終始しない、まったく新しいアクセス解析の姿に出会った楽天時代

 

清水氏は、2008年から2011年まで、楽天に在籍し、さまざまなサイトから成る楽天経済圏におけるアクセス解析に従事していた。業界を巻き込みつつ、能動的で有機的な評価指標によってサイト全体の最適化をしてゆく彼の手法は、当時注目を浴びた。

「普通のことはしたくないです。誰も気付かない、できない、思い付かない、やろうとしない新しいことを常に開拓し、それを広めたい。アクセス解析の導入と推進を担当することになったのは偶然です。そのために楽天に入ったわけではない。でも、ユーザーエクスペリエンスやIA、CMSとの接点を模索し切り開いた結果、偶然は必然に変わりました」と清水氏は語る。

清水氏はそのキャリアを活かし、IAとCMSとアクセス解析を同じ次元で考え、相乗効果を出す、ということを行っていった。その集大成の一つがコンセプトダイアグラムだ。受け身で無機質な効果測定に終始しないその手法で、まったく新しいウェブサイトの評価方法を開拓し、自らの活動やコンサルテーションのスタンダードになりつつある。そして清水氏は、何よりも自分のキャリアのためにこうした仕事を活用しているという。

ノウハウを貯めこんで、それを発信することで価値を出すのではないんです。自分で考え、実践して体系化したノウハウを公開して、誰でもマネできる状態にするのは人生のミッションなので、非営利です。自己満足なので趣味に近いですね。このミッション達成のために、リソースを使って試す場が会社です。体力と知名度がある程度あって、事例としても広めやすいのが大事。ついでに正社員として安定した給与をもらえるからこそ、社外で自由な活動ができる。お金や名声のために余計な労力を使う必要もない。そのかわり、与えられた業務を誰にもできないレベルでこなすことで、企業にとってもメリットをお返しする。事例を積み重ねれば、キャリアもつながるわけです。

“下済み時代にバイトをして貧乏な暮らしをしながらがんばるミュージシャンの卵”では、効率が悪すぎるんです。企業が価値を見いだせる活動、私の場合は新しい分野の開拓と導入、を趣味にして、時代に合わせてその領域を変えていけば、このモデルは長く持続できると思っています。別にアクセス解析が好きなわけではなく、新しいことができるようになること、それに自分が貢献できることが重要です。ある程度開拓が終わって、ほかの人でもできる状態になったら、キッパリと手を引いて別の分野に移動します。そうして、開発とIAとCMSを開拓・統合してきました。忘れて離れるというよりも、全部を統合してシナジーを出す、という感じですね。詳しい領域が増えるほど、開拓の速度が速くなっているような気がします」と清水氏。

その会社の中で評価されるということは、彼にとってひとつのKPI(目標達成指標)に過ぎない。あくまで彼にとってのゴールは、ウェブを含むもっと大きなフィールドに個人として向かい合うこと。そしてその全てが、発信を通じて自分のキャリアとして生かされてゆくことだ。

清水誠

電通アイソバー CAO (Chief Analytics Officer)

データとビジュアライズで企業や組織を顧客視点に変えるChange Agent。常識に囚われない発想力と実行力で新分野を開拓し、組織を内側から大胆かつ着実に変えていくのが得意。 日本でUXやIA、CMS、Web解析の分野を開拓した後、渡米。米AdobeにてAnalytics製品(旧SiteCatalyst)の企画・開発・啓蒙に携わる。2014年に帰国し独立。現電通アイソバー CAO (Chief Analytics Officer)。公式サイト

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山口謙之介

大学卒業後、教材の営業を担当。2004年12月ロフトワークに入社し、クリエイティブ・ディレクターとしてCMSを用いたサイトの構築から、新技術を用いたWeb関連アプリケーションの開発のディレクションなど幅広いプロジェクトを担当。2007年10月よりマーケティングを担当し、現在は loftwork.jp全般の管理を行う。

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