“UXディレクター”という役割で広い領域の仕事をしてゆく
bA時代に、ディレクター、デザイナー、インフォメーションアーキテクト、マークアップエンジニアなどWeb制作者の分業化が進む中で、森田氏の主要な職域はUIデザイナーからWebディレクターにシフトしていったという。ところが新たに会社を興すに際し、氏はWebディレクターでもWebコンサルタントでもなく、敢えて“UXディレクター”という肩書きを選んでいる。
「ツルカメの業務は今のところWebサイト制作が中心ですが、Webサイト制作専門だというわけではありません。ネット以外にもリアルの企画も扱いますし、プロダクトやサービス開発にも関わります。人の生活における体験や体感は、サイトの中だけで完結するわけではありませんからね。そういう意味では、コミュニケーションデザインに近いところに自分たちは位置していると思います。でも、 “コミュニケーションデザイン”という言葉は最近ちまたに溢れすぎてるなあという気持ちもあって、UX視点でディレクションするというポジションとしてUXディレクターと名乗ることにしたんです」
確かに“ユーザー体験のディレクター”と名乗ることで、広い領域で仕事をすることができるわけだ。第三者的なニュアンスの強い、コンサルタントともまた異なる。「ほかに名乗っている人がいない造語みたいなものだから、”その肩書は何?”と聞かれることで、会話のきっかけにもなるし、自分の立ち位置を再確認したりもできます」ということもある。
さて現在、仕事の大半は、中規模企業・団体のサイトコンサルティングやキャンペーンサイトのディレクションであるという。当面はWebサイト制作におけるデバイド解決がテーマになりそうだ。
「先に話したようにWebが使えなくなることが恐ろしいんです。最初は単なる興味で、そのうち社会的意義みたいなのも感じてアクセシビリティの分野にも関わってきましたが、これは今では、“自分のためにやっている”と確信していますね」
Webのインフラを整備し、ユーザーに未知の体験を演出することで、出来上がったサイトはツルカメの由来どおり長く愛されることとなる。氏のこれからの仕事や活動からますます目が離せないだろう。